(国)物質・材料研究機構と東北大学は6月8日、酸化亜鉛(ZnO)をコーティングした高性能なベアリングを開発、これを使い災害時に家庭で使える小型ジェットエンジン発電機を(有)フォックスコーポレーションと共同で開発したと発表した。
文部科学省の大学発グリーンイノベーション創出事業「グリーン・ネットワーク・オブ・エクセレンス(GRENE)」の一環として行われた研究の成果。
機械類や装置類に駆動部分はつきもの。例えば自動車、百数十個所もの駆動部分がついているといわれる。
そうした駆動部では、摩擦によるエネルギーのロスが生じており、摩擦力を低減して省エネルギー化を図ろうという研究がそれぞれの分野で進められている。
ベアリングは、その駆動部の摩擦を低減するためのまさにキー部品で、今回の高性能ベアリングは低摩擦化を環境にも優しい材料の酸化亜鉛をボールの表面にコーティングする技術を開発して実現した。
酸化亜鉛は、これまで摩擦係数が大きいため低摩擦化への利用は困難とされていたが、研究グループは酸化亜鉛の結晶の配向性(結晶の方向)を制御することで摩擦係数を大幅に低減できることを見つけその壁を破った。
籠状のサンプルホルダーにベアリングボールを入れて回転させ、ボールとスパッタターゲット(スパッタリングの材料)との間の距離や回転速度などを調整することで結晶配向性を最適化して摩擦係数がコーティング無しの市販のベアリングの約3分の2という低摩擦の酸化亜鉛コーティングベアリングを得ている。
この低摩擦酸化亜鉛コーティング材は、常温から高温まで、大気中、真空中、油中で幅広く使えるため、ベアリングだけに留まらず、低摩擦化が必要なさまざまな駆動部への利用が可能と研究グループはいっている。
フォックスコーポレーションと共同開発した酸化亜鉛コーティングを施したベアリングを組み込んだ小型ジェットエンジン発電機は、その成功例。
この発電機は、重さが約40kg、大人2人で運ぶことができる。発電能力は、最大で8kw、一般の家庭2軒の電気をまかなえる。燃料は、灯油で廃熱を利用して温水が作れ、省エネルギー化も図っている。「今後フォックスコーポレーションが災害用小型ジェットエンジン発電機として展開する予定」と物材機構はいっている。