今より電気を2倍も蓄えられる電極材料を開発
―リチウムイオン二次電池用に、寿命も長い
:物質・材料研究機構(2016年5月17日発表)

 (国)物質・材料研究機構は5月17日、今より電気を2倍近くも多く蓄えられ、寿命も長い大容量のリチウムイオン二次電池が作れる電極材料を米国のジョージア工科大学と共同で開発したと発表した。

 二次電池は、蓄電池ともいい、充電によって繰り返し使える電池。リチウムイオン二次電池は、正極(プラスの電極)と負極(マイナスの電極)の間をリチウムイオンが行き来することで充電、放電を行う電池をいう。小型で軽量なことから携帯電話、ノートパソコンをはじめ電子・電気機器に幅広く使われ、発明した日本人を含む4人の研究者は、工学分野のノーベル賞といわれる「チャールズ・スターク・ドレイパー賞」を受賞し、市場は1兆円を超え、さらに自動車への利用が期待されている。

 開発したのは、そのリチウムイオン二次電池用の「シリコン系金属化合物」と呼ばれる新しい負極材料。

 現在、負極には、炭素系材料が使われ、容量(放電容量)は最大で1g当たり370mA(ミリアンペア)の電流を1時間流せるレベルまでいっているが、シリコン(珪素)材料を使えるようにすればその10倍以上の4,200mA時までもっていけることが分かっている。

 しかし、シリコン材料は、体積膨張が大きく、そのために充放電のサイクル寿命が極端に短くなり、色々と対応策の研究が行なわれているが、実用化のレベルには程遠い状況にある。

 新負極材料は、ステンレスの基板上にゲルマニウムで1次元のワイヤー状のナノ構造を設け、それを下地にシリコン系金属化合物のナノ粒子を作ることで得た。

 走査電子顕微鏡で観察した結果シリコン系金属化合物は、ステンレス基板上に直径数10nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)のナノ粒子が集まった直径200nmほどのボール状の粒子が多数堆積した構造を形成していることが分かった。

 新負極材料をコインタイプのリチウムイオン二次電池に組み込んで充放電特性を評価したところ、現在の炭素系材料の最大容量1g当たり370mA時の約2倍の700mA時の高い容量が得られ、110回の充放電での容量低下が5%以内に収まることが確認されたとしている。

 材料中に含まれる主な元素が地球の主要な構成元素のシリコンと鉄なので「コストの削減を行いやすい材料といえる」と物材機構は見ている。

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