ブラジル大会公式球「ブラズーカ」は飛びやすい
―サッカーW杯、他の大会のボールに比べ優れた安定性示す
:筑波大学(2014年5月29日発表)

 筑波大学は5月29日、国際サッカー連盟(FIFA)が6月中旬にブラジルで開催するワールドカップ2014の公式球「ブラズーカ」が前回大会の公式球に比べて飛びやすく安定した飛行特性を持つことがわかったと発表した。風洞やキックロボットを用いた実験で明らかにした。新しいボールの開発やスポーツ技術の理解・習得に役立つ。研究したのは、筑波大の洪性賛研究員(スポーツR&Dコア)と浅井武教授(体育系)の研究グループ。

 

■風洞実験などで確認

 

 4年に1度のワールドカップは、6月中旬にブラジルで始まるが、その公式球は6枚のパネルを貼りあわせて作られている。2010年の南アフリカ大会(8枚)や、2006年のドイツ大会(14枚)とは大きく異なっており、ボールの飛び方などにも影響があると考えられている。しかし、その飛行特性についての研究はほとんどなかった。

 そこで研究グループは、これまでの公式球6種類について風洞実験とキックロボットを用いて、蹴り出し時のボールの向きや発射角度、速度と飛行時の空気抵抗や揚力、安定性などとの関係を分析した。

 その結果、ブラジル大会のブラズーカは前回大会のジャプラニに比べ、パスやロングキック時のボール速度である秒速25m以下の中速領域で急激に空気抵抗が小さくなり、飛びやすくなることがわかった。

 また、ボールが回転しないようにして、秒速20mと30mで飛ばした場合についても調べた。この条件では、いずれのボールもパネルの向きの違いで空気から受ける力にほとんど差はなく、パネル枚数の方が大きな影響を及ぼしていた。特に秒速30mでは、今大会のブラズーカは、他のボールに比べてボールの向きによる揺れの差が小さく、安定した空気特性を示した。キックロボットが蹴り出したボールの着弾点のばらつきを調べる実験でも、ブラズーカ以外は蹴り出し時のボールの向きによる差が大きく、ブラズーカの安定性が優れていた。

 これらの結果から、研究グループは「パネルの枚数や向きなどサッカーボール表面の形状がボールの飛び方に影響を与える重要な要因になっている」とみている。

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