爆発を繰り返し発生させる火山の「蓋」の構造とは?
(産業技術総合研究所 地質調査総合センター 松本 恵子)
(2026年10月15日)
1.はじめに
火山の噴火には爆発が繰り返し発生するものがあります。なぜマグマは一度に出ていかないのでしょうか。そのメカニズムを調べるにはいくつかのアプローチが考えられます。例えば、噴火中の火山を遠くから観察するとか、実験室で扱えるミニチュアの模型で爆発を模擬するとか。できるなら噴火中に火口のそばで観察するのが一番かもしれませんが、さすがに高温のマグマが噴出している火口に人間は近づけません。最近は衛星やドローンで観られるのでは?と思われるかもしれませんが、行動時間や範囲、時空間の分解能に制約があります。そこで我々は、噴火が終息して間もない時期に火口に近づいて観察するというアプローチをとりました(Matsumoto and Geshi, 2026)。ターゲットは、鹿児島と宮崎の県境に位置する新燃岳(しんもえだけ)です(図1)。

2.噴火の経緯
新燃岳は2018年3月1日に噴火活動が始まりました。3月6日にはクレーターのほぼ中央から溶岩が流出し、噴煙や爆発も同時に見られましたが、次第に勢いが弱まり、3月10日以降はほぼ同じ火口から間欠的に爆発が発生するようになりました(ブルカノ式噴火)。火口に近づけない噴火中は遠方で採取された火山灰(2ミリ未満の噴出物)の種類を調べます。溶岩流出期は発泡した軽石状粒子が多く、間欠的な爆発の時期は緻密な岩片や赤色粒子が特徴的に含まれていました(Matsumoto and Geshi, 2021)。
3.調査
我々は噴火の終息後に山頂クレーター周囲と火口内壁の調査を行い、岩石のマクロな構造や組織を直接観察しました(図1、2)。クレーター内は間欠的爆発の噴出物で覆われ、多くは表面が赤色の溶岩片、もしくは火山灰などが脈状に貫入した赤色の「タフサイト脈」を持つ岩石でした(図2)。これら赤色の原因は、高温・高酸素雰囲気で酸化した組織によると判明しました。つまり、岩石が割れてばらばらになった後に高温酸化して赤色化したと読み取れます。また、タフサイト脈には火山灰粒子どうしが焼結(しょうけつ)、偏平(へんぺい)に変形した組織(溶結)が見られるものもあり、溶結度は手で外せるほど弱いのものから、脈がねじれて押しつぶされ引張強度(ひっぱりきょうど)も非常に高いものまで観察されました(図2)。この観察から、岩石が割れ、その隙間にタフサイトが入り込み、様々な程度で押しつぶされたと推定されます。

4.爆発のメカニズム
ブルカノ式噴火のメカニズムは、「高圧源を閉じる“蓋(ふた)”が破壊され爆発する」と理解されています。実際の噴火で“蓋”となるのは溶岩です。しかし爆発が繰り返すとき“蓋”がどうして何度も再生するのか、不思議です。火口近傍の岩石の組織から、我々は次のようなメカニズムを提案しました(図3)。
それは、直前の噴火で岩石中に無数の割れ目ができる。タフサイト脈の溶結により、岩石どうしが接着されガスの流路も閉塞する。この効果で割れ目がすばやく修復され、“蓋”の強度が回復すると同時に、その直下に火山ガスが蓄積する。ガス圧力が“蓋”の強度を上回ると再び爆発する。このような“蓋”の部分的な割れと修復が爆発の繰り返しを生む、というモデルです。

さらにこのモデルでは赤色酸化が起こった場を説明できます。溶岩最下部はタフサイトが強く溶結して“蓋”ができる一方で、それより上は溶結が弱く粒子の隙間を大気が循環し、高温・高酸素雰囲気の条件になると考えられるからです。クレーター内に見られた赤色の岩石やタフサイト、また遠方で採取された赤色の火山灰粒子は、深部のガス通路が閉塞している間に、より浅部(せんぶ)でじっくり酸化された噴出物であると考えられます。
「割れと修復を繰り返す蓋」という一つのモデルにより、溶結と色といった異なる岩石の特徴と、爆発が繰り返されるメカニズムをうまく説明することができそうです。
5.おわりに
新燃岳の2018年噴火は、噴火の直後に徒歩で火口にアプローチし、“新鮮な”岩石を観察・分析できた非常に貴重なケースです。赤い岩石やタフサイトの存在はその場に行くまで全く想像しておらず、現地で観察できる情報量の多さを実感しました。調査にあたっては安全面や許認可など関係機関の皆さまに大変お世話になりました。ご協力に感謝申し上げます。
【参考文献】
・Matsumoto, K., Geshi, N. Shallow crystallization of eruptive magma inferred from volcanic ash microtextures: a case study of the 2018 eruption of Shinmoedake volcano, Japan. Bull Volcanol 83, 31 (2021). https://doi.org/10.1007/s00445-021-01451-6
・Matsumoto, K., Geshi, N. Repeated fracturing-healing behavior of lava plugs drives intermittent explosions during Vulcanian eruptions. Geology 54 (7), 647–651 (2026). https://doi.org/10.1130/G54286.1
【参照プレスリリース】
・産総研:噴火の爆発力を蓄積する硬い“蓋”がなぜ短期間に修復されるのか?(2026年4月27日発表)
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松本 恵子(まつもと けいこ)
産業技術総合研究所 地質調査総合センター 主任研究員。広島県出身。東北大学に入学、理学研究科地学専攻を修了し現職。岩石の物質科学(素材・テクスチャー・構造・物性と相互作用)に興味があり、火山を対象に研究しています。

