超電導ダイヤを電極に使い超高圧発生装置を開発
―超高圧下での電気抵抗の測定が容易に
:物質・材料研究機構/愛媛大学(2016年2月22日発表)

 (国)物質・材料研究機構と愛媛大学の共同研究グループは2月22日、世界で一番硬い超電導ダイヤモンドと世界で一番硬い人工ダイヤであるヒメダイヤを組み合わせ、超高圧下で試料の電気抵抗を簡単に測定できる超高圧発生装置を開発したと発表した。新しい超電導体をはじめとする新機能性材料の探索が期待できるという。

 

■新機能性材料の探索に期待

 

 数十万気圧から100万気圧という超高圧を作り出せる現在の装置(ダイヤモンドアンビル)は、ハイヒールのかかとのように先のとがった形をしたダイヤモンドを2つ上下に向かい合せ、かかとの間に挟まれた小さな空間に圧力を集中させて超高圧を生み出す仕組みになっている。

 しかし、これだと超高圧下で試料の電気抵抗を測定するための電極の取り付けが極めて難しく、電極取り付け作業は特別な技能を持った人に頼らざるをえなかった。

 研究グループはあらかじめ電極を組み込んでおいた状態で超高圧をかけられる仕組みを考え出し、今回その開発に成功した。

 下部のかかとを取り外し、代わりに、計測用電極を転写した台をアンビルとして用いたもので、愛媛大学が先に開発したヒメダイヤと名付けられたナノ多結晶ダイヤを台に利用し、この表面に、金属のように電気を通す超電導ダイヤモンドでできた電極をリソグラフィーで微細加工した。

 ヒメダイヤは粒径10~20nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)の微小なダイヤの焼結体で、純粋な多結晶ダイヤモンド。非常に硬く割れにくく、単結晶ダイヤに比べ耐摩耗性が高く、劈開性(へきかいせい:結晶が特定の方向に割れやすい性質)が見られないなどの優れた特徴を持つ。電極も世界で一番硬いダイヤにしたことで装置を繰り返し利用できる。

 超高圧下での物性測定作業の効率が大幅に高まり、経済性の各段の向上にもつながる成果で、超高圧下での材料開発研究への貢献が期待できるとしている。

詳しくはこちら

図

ダイヤモンドアンビルの構造。新しいダイヤモンドアンビルセル(DAC)は、下側にヒメダイヤを用い、その上に超電導ダイヤモンドで電極を加工した。従来のものは、2つのキュレット部分を押し当てて圧力を発生させるが、電極は別途キュレットとガスケットの間に差し込む必要があった(提供:(国)物質・材料研究機構)