両生類の感染症「イモリツボカビ」はアジア起源
―ヨーロッパ産に対しては「致死性」、種の急減も
:国立環境研究所/京都大学ほか(2014年10月31日発表)

 (独)国立環境研究所は10月31日、イモリやサンショウウオなどの両生類の新興感染症として国際的に問題となっている「イモリツボカビ」の調査結果を発表した。新興感染症は、新しく病原体が発見され、国際的に公衆衛生上問題となっている感染症。野生生物の新興感染症は、生物多様性減少の大きな要因で、1980年代から真菌の一種のツボカビ菌による「カエルツボカビ症」が世界的に流行し、カエルやサンショウウオの種の減少が深刻化している。

 

■人為的移送で拡大

 

 「イモリツボカビ」は、カエルに続く第二のツボカビ症。昨年、ヨーロッパに広く分布するイモリの一種「マダラサラマンドラ」への感染が見つかり、同イモリに壊滅的な被害を与えていることが判明、ヨーロッパの両生類の多様な種が急減しているといわれている。

 こうしたことから、欧・米・豪・日など12カ国の研究者からなる国際共同研究グループが結成され、新興感染症が世界の両生類多様性に及ぼす影響の解明が進められ、日本からは国立環境研と京都大学が参画している。

 今回の調査もその一環として国立環境研と京都大学、欧米・アジアの研究グループが共同で行ったもので、ヨーロッパ、アジア、アフリカ、アメリカの4大陸から野生の両生類5,391個体分のサンプルを採集し、それぞれのDNA(デオキシリボ核酸)の鑑定を実施して調べた。

 その結果、「イモリツボカビ」は、カエルなどの無尾類には寄生せず、有尾類のイモリ、サンショウウオにのみ寄生することが判明した。また、この菌に対する反応性をみると、ヨーロッパ産の多くが感染後に死亡する「致死性」を示したのに対し、アジア産は、菌に感染しない「抵抗性」や、病害が出ない「耐性」、症状は出るが死には至らない「感受性」を示した。「この菌はアジア地域に永きにわたって生息する生物で、ヨーロッパには近年になって侵入してきた外来生物ではないかと考えられる」と結論。この菌に対して抵抗力のないヨーロッパ地域の有尾類は、今後壊滅的な被害を受ける可能性が高いと警鐘を鳴らしている。

 また、菌は、イモリがペットとしてヨーロッパに移った人為的移送によるものとみられ、両生類に対する検疫の不備によって拡大し、生物多様性が減少していることを実証しているとしている。

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