(独)農業生物資源研究所と(独)理化学研究所は10月28日、コメの風味や耐病性などイネの品種による違いに関係した遺伝子変異を検出したと発表した。日本のイネ175品種が生体内で作る物質を解析、ゲノム(全遺伝情報)の一部が変異した遺伝子多型が143カ所あることを突き止めた。日本主導で解読してきたイネゲノムの情報と併せて活用すれば、イネの新品種開発などが効率化できると期待している。
■イネの効率的な品種開発も
生物が体内で作る物質には、成長や生殖など生命活動の維持に直接関わる一次代謝産物のほか、生命活動の維持には直接かかわらない二次代謝産物がある。品種の違いによるコメの風味などは二次代謝産物の含有量の差が関係しているとみられるが、品種による差や遺伝子多型との関連などは不明だった。
研究グループは、日本で栽培されている175品種のイネの葉から324種類の代謝産物を検出、このうち91種類の構造を解明した。この中にはアミノ酸など一次代謝産物のほか、抗酸化作用を持つフラボノイドなど多種類の二次代謝産物が含まれていることを突き止めた。また、それらの組成には品種間で大きなばらつきがあることがわかった。
さらに、品種間に存在するばらつきを、ゲノム上の遺伝子多型の情報から統計的に検出する分析を試みた。その結果を、生物資源研が整備した3168個のイネ遺伝子多型情報と組み合わせて解析したところ、89種類の二次代謝産物の含有量に関係する遺伝子多型を143カ所検出することに成功した。
今回の成果は、複数の健康機能成分を含むイネの開発などに役立つ。さらに、遺伝子組み換え技術を利用せずに、有用代謝物を多く含む新品種を短期間で開発する技術の実現にもつながると、研究グループは期待している。