トビイロウンカに強いイネの遺伝子を特定
―インドのイネに抵抗性、栄養分吸えずウンカ餓死
:農業生物資源研究所/九州大学/名古屋大学(2014年10月29日発表)

 (独)農業生物資源研究所と九州大学、名古屋大学は10月29日、稲作に大きな被害をもたらす害虫「トビイロウンカ」に抵抗性を持つイネの遺伝子を特定したと発表した。インドで栽培されているイネから取り出し、害虫を餓死させる機能を持つことを明らかにした。今後、交配などによってこの遺伝子を日本のイネに組み込み、害虫に強い新品種の開発を進める。

 

■日本産イネに組み込み、品種改良実現へ

 

 トビイロウンカは中国から飛来し、イネの栄養分を吸って枯れさせる。10年ほど前から殺虫剤に強いトビイロウンカが飛来し始め、昨年は約100億円にも及ぶ深刻な被害を国内の稲作にもたらした。

 研究グループは、インドで栽培されるイネが持つ2種類の遺伝子が、中国から飛来するトビイロウンカに強い抵抗性を示すことに注目。これらの遺伝子を利用して、害虫に強いイネを品種改良で作る検討を進めていた。

 今回単離したのは、これら2種類の遺伝子のうち「BPH26」と呼ばれる遺伝子。染色体のどこにあるかを特定するとともに、その機能を詳しく解析してイネの品種改良に利用できるようにした。単離した「BPH26」を日本のイネに導入した実験では、トビイロウンカがイネの茎に口を差し込んでもうまく汁を吸えなくなり、餓死することも明らかになった。

 今回単離したのは2種類の遺伝子のうち1つだけだったが、「BPH25」と呼ばれるもう1つの遺伝子が同時に存在すると、イネはトビイロウンカにより幅広い抵抗性を示すことが分かっている。このため研究グループは「BPH25」遺伝子の研究も急ぎ、2~3年中には2つの遺伝子を利用したイネの品種改良に着手したいとしている。

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「BPH26」遺伝子が抵抗性を発揮する仕組み。「BPH26」遺伝子があると、ウンカは栄養分のある師管液を十分吸うことができず、やがて餓死する(提供:(独)農業生物資源研究所)