（独）産業技術総合研究所と（株）イノアックコーポレーションは10月27日、断熱性能の優れた真空断熱材に近い性能を持ち、切断や曲げが容易な高性能な複合断熱材を開発したと発表した。狭くて複雑な形状の空間の断熱ができ、振動にも強いため、自動車や航空機、熱機器などに用い、断熱性や熱利用の向上を図ることが期待できるという。
■熱伝導率よく振動に強い
多孔質の芯材を真空パックした真空断熱材は断熱性能が優れるが、自在な加工は困難で、曲面への対応などに問題がある。一方、低密度なシリカエアロゲルを不織布やポリマーなどと複合化した断熱材は、真空の維持が不要で加工性に優れるが、シリカが崩れて崩落する“粉落ち”の問題を抱えている。
高圧CO2(炭酸ガス)を用いたシリカエアロゲルの製造・応用開発などに取り組んでいる産総研の研究チームと、高圧CO2による発泡ポリマーの開発などで高い技術力を持つイノアックコーポレーション（INOAC）は、今回共同で、ポリプロピレン発泡体内部にシリカエアロゲルを充填した複合断熱材を作製した。
具体的には、INOACが開発した高圧CO2によるポリプロピレン発泡体シートの内部に、CO2による超臨界乾燥を用いてシリカ湿潤ゲルからシリカエアロゲルを形成し、ゲル内部の溶媒を除いてポリプロピレン発泡体とシリカエアロゲルの複合断熱材を得た。
この新断熱材は曲面に対応した形状にでき、刃物による切断加工もできる。熱伝導率は一般的な断熱材であるグラスウールや発泡ポリスチレンなどより優れ、真空断熱材に近い性能を持つ。揉み試験による粉落ちの調査では、これまでのシリカエアロゲル系断熱材に比べ大幅な粉落ち減少が認められたという。今後は低コストの製造プロセスを開発するとともに、用途開拓を進めたいとしている。
