粘土鉱物のセシウムイオン取り込みを解明
―「バーミキュライト」…土壌の浄化や減容化に効果
:高エネルギー加速器研究機構/日本原子力研究開発機構ほか(2014年10月31日発表)

 高エネルギー加速器研究機構、(独)日本原子力研究開発機構、(一財)電力中央研究所、山形大学の共同研究グループは10月31日、土壌成分の一つである粘土鉱物「バーミキュライト」がセシウムイオンを大量に取り込むメカニズムを解明したと発表した。土壌中の放射性セシウムの除去や減容化技術の開発などに大きな貢献が期待できるという。

 

■粘土層の間にまとまった集団で吸着

 

 粘土鉱物は薄いシート状の無機物が積み重なった構造のもので、上下のシートの隙間に陽イオンを取り込む性質がある。なかでもバーミキュライトの層間にはセシウムイオンが強固に、かつ選択的に取り込まれることから、このメカニズム解明が求められていた。

 研究グループは今回、X線小角散乱法という方法を用いて、セシウムイオンがバーミキュライトに吸着した時に起こる構造変化を0.1-100nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)の幅広い空間スケールで観察した。

 その結果、セシウムイオンの吸着は、バーミキュライト中の特定の層の間に、ある程度まとまった集団として取り込まれることが明らかになった。バーミキュライトの或る個所にセシウムイオンがまず1個吸着すると、その隣が吸着されやすくなって新たな吸着が生じ、その進行によって粘土層に多くのセシウムイオンが取り込まれる。

 さらにこれがきっかけで、2つの層がはがれ、それぞれの粘土層の表面も新たな吸着サイトになり、ドミノ倒しのように次々とセシウムイオンが吸着されることが明らかになったという。

 セシウムイオンの吸着に併せて進行するバーミキュライトの構造変化の解明は初めてで、セシウムイオン大量取り込みのメカニズムが明らかになったとしている。

 この成果は放射性セシウムの環境移行予測、汚染土壌の浄化・減容化法の技術開発など、福島県の環境回復に有用な知見となる。また、福島県内の土壌にはバーミキュライト以外に黒雲母やスメクタイトなど、セシウムイオンを取り込む粘土鉱物が多く存在することから、今後これらの鉱物についても分析するという。

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セシウムイオンが層構造に吸着したときのバーミキュライトの構造変化(提供:高エネルギー加速器研究機構)