ナトリウムイオン電池に実用レベルの充放電性能
―小規模実験で高速充放電の可能性を確認
:筑波大学(2014年5月28日発表)

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NaχMnO2の薄膜電極の放電曲線。130Cでも0.1Cの容量の約50%を維持していることが分かる(提供:筑波大学)

 筑波大学は5月28日、太陽光発電や風力発電などの電気を蓄える大型蓄電池として期待されるナトリウムイオン電池の小規模実験装置を作り、電気化学的特性を調べたところ、高速充放電が可能であることを示す実用レベルの性能が確認できたと発表した。この実験で得られた材料設計指針をもとに今後、高性能なナトリウムイオン電池の開発が期待されるとしている。

 

■正極材料に層状酸化物を利用し成果

 

 パソコンや携帯電話などに広く利用されているリチウムイオン電池は電解液中をリチウムイオンが移動するのに対し、ナトリウムイオン電池はナトリウムイオンが移動する二次電池。ナトリウム元素は豊富で安価なことから、その特長を生かしたナトリウムイオン電池の開発が期待されているが、ナトリウムイオンのイオン半径はリチウムイオンに比べて大きく、二次電池のパワーの指標である放電レートでリチウムイオンに匹敵する値を得るのは困難と考えられていた。

 研究チームは今回、遷移金属元素であるマンガン(Mn)の層状酸化物NaχMnO2を金の上に堆積した薄膜電極を作製、これを正極とし、ナトリウム金属を負極、NaClO4を溶かした炭酸プロピレン溶液を電解質とする電池をつくって放電レート特性や拡散係数を測定した。

 放電レートはフル充電から放電状態へ変化する時間の逆数で、この数値が大きいほど大きな電流(パワー)を取り出すことができる。拡散係数は正極材中のイオンの動きやすさを示し、動きやすいほど大きな電流を取り出せる。

 実験の結果、拡散係数はリチウムイオン電池で実用化されているもの(LiCoO2)と同程度を確認、薄膜電極の放電レートも実用レベルの値に達していたという。

 今回の研究で得られた知見をもとに、今後より高い放電レート特性を持つ正極材料の開発を進めたいとしている。

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