筑波大学は6月13日、大阪大学と(国)理化学研究所の研究者らと共同で、精子頭部が正常に形成するために必要なタンパク質ACRBPを発見したと発表した。このタンパク質は男性不妊の主な原因である奇形精子症と関連している可能性があるため、男性不妊の原因解明や新治療法の開発などが期待できるという。
オタマジャクシのような形をした精子の頭の部分にはアクロソーム(先体)と呼ばれる袋状の小さな細胞小器官があり、ここに含まれる様々なタンパク質は卵子との融合など受精に重要な役割を果している。
研究チームは、このアクロソームタンパク質ACRBPを欠損させた遺伝子改変マウスを作り、ACRBPの生理機能を詳しく調査した。
その結果、ACRBPを欠損させた雄マウスは、精巣重量や精子数に変化は見られなかったが、メスを妊娠させる能力に著しい低下(低妊孕性)が認められた。
精子は球状精細胞、伸長精細胞を経て精子細胞になるが、アクロソームは球状精細胞の時に生合成が始まり、その後DNAの詰まった核の表面に結合して、内部に顆粒状の構造物を含む大きなアクロソームを形成、伸長精細胞になるとアクロソームは核頭部を覆うように伸長する。
ACRBP欠損マウスの精子ではアクロソームと核のこの形態に4種のタイプの異常が認められた。また、本来は不活性な状態に維持される機能がACRBP欠損マウスでは自発的な活性化が起こっていることなどが分かった。
これらのことから、ACRBPはアクロソームの正常な形成や機能のために必要なタンパク質であることが判明したという。
ACRBP欠損マウスの精子形態はヒトの奇形精子症の症例と酷似しており、今後奇形精子症患者のACRBP遺伝子の変異を調べることで疾患の原因が解明される可能性があるとしている。