サマリウム‐鉄‐窒素磁石の焼結技術を開発
―最強の耐熱・高性能磁石になる可能性浮上
:産業技術総合研究所(2015年9月18日発表)

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今回開発した技術と従来技術によって作製したサマリウム‐鉄‐窒素の焼結磁石の保磁力の変化率。従来技術では保磁力は約70%低下するのに対し、今回の技術では保磁力は低下しない(提供:(国)産業技術総合研究所)

 (国)産業技術総合研究所は9月18日、磁石性能を低下させずにサマリウム‐鉄‐窒素(Sm-Fe-N)系磁石粉末を焼結固化する技術を世界で初めて開発したと発表した。最強の磁石とされるネオジム-鉄‐ホウ素(Nd-Fe-B)焼結磁石を超える高耐熱・高性能磁石が作れる可能性があり、ハイブリッド車用駆動モーターなど高温環境下での応用が期待できるという。

 

■焼結密度向上などで実用化目指す

 

 サマリウム‐鉄‐窒素系磁石粉末は現在、プラスチックやゴムに練り込まれ、柔軟なボンド磁石などとして使われている。この粉末材料の中で、一方向に強い磁化を持つ異方性磁石粉末を用いて磁石を作ると強力な磁石になる潜在力が認められている。

 しかし、熱に弱く、焼結すると保磁力が急激に低下してしまうため、粉末を焼結固化して強力な磁石を作り出すことは不可能とされていた。

 産総研のチームはこれまでの研究で、保磁力の急激な低下原因は粉末の表面に酸化膜があり、加熱によって酸化還元反応が生じ、組成分中の鉄が析出することによると推測、この推測に基づき、焼結固化前に粉末表面に酸化膜が形成されることを防ぐ低酸素プロセス法を開発した。

 このプロセスを用いて異方性磁石粉末を焼結固化したところ、保磁力の低下はほとんど認められず、この製法で耐熱性のある強力なサマリウム‐鉄‐窒素異方性焼結磁石を作れる可能性を確認できたという。

 現在のところ磁化の方向性が十分そろってなく、焼結密度もまだ足りないため、今後これらを改善して磁石性能の指標の最大エネルギー積を高め、実用化を目指したいとしている。

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