災害時のトイレを数字で考える
(2026年10月15日)
10月13日は、国連が定める「国際防災デー」です。自然災害による被害を減らすため、防災や減災の大切さについて改めて考える日として、世界各地でさまざまな取組が行われています。
防災というと、備蓄を思い浮かべる方が多いかもしれません。大規模な災害ではライフラインや物流に影響が出るため、家庭では7日間程度の備蓄が推奨されています。
備蓄と聞いて、まず思い浮かぶのは食料ではないでしょうか。「家族4人分の食料を7日分備蓄」と言われれば、昨日、何をどのくらい食べたかを思い浮かべ、必要な量をある程度想像することができます。
災害への備えでは、必要となる量を具体的な数字で把握することが大切です。
(「生活を測って防災しよう」 つくばサイエンスニュースわかる科学(2025年9月1日号))
では、トイレはどうでしょうか。昨日、何回利用したかをすぐに答えられる人は多くありません。さらに、どのくらいの量を排泄したかまで把握している人はほとんどいないでしょう。私たちは普段、食事の量は意識していても、排泄の量を意識する機会はあまりありません。
一般成人では1日に5~7回程度排尿し、1回当たり200~400mL程度の尿を排出するとされています。排泄は生理現象なので、災害時でも止めることはできません。食事を少し遅らせることはできても、排泄を我慢し続けることは難しく、トイレの問題は災害発生直後から発生します。
ここで、トイレの役割について考えてみましょう。冒頭の写真のように、トイレには「用を足す場所」と「排泄物を片付ける」という二つの役割があります。災害時のトイレ対策では、この二つの役割を分けて考えることが重要です。
一般的な水洗トイレでは、1回流すだけで8~10L程度の水が必要です。また、トイレを使うためには下水道や排水設備が正常に機能している必要があります。災害時には下水道や排水管が被害を受けることがあるため、「水がないから流せない」だけでなく、「水があっても流せない」状況が発生する可能性があります。
このようなときに役立つのが携帯トイレです。排泄物を固めて処理することで、自宅の便器を「用を足す場所」として使い続けることができます。
1日に5回トイレを利用すると、4人家族では1週間で140回のトイレ利用が発生します。つまり、140回分の備えが必要になる計算です。
では、新聞紙など身近なもので代用できるのでしょうか。筆者が行った実験では、シュレッダーで細かくした新聞紙3枚分で200mLの水を吸うことはできましたが、持ち上げると水分が漏れ出し、十分な保持性能は確認できませんでした。
さらに量も問題です。1回当たり新聞紙3枚を使うと、140回分では420枚必要になります。一般的な朝刊が8~10枚程度であることを考えると、40~50日分の新聞に相当します。性能面だけでなく量の面から見ても、新聞紙は現実的な代用品とは言えません。
私たちは食料の備蓄量は比較的イメージできますが、トイレに必要な量を考える機会は多くありません。しかし、数字で考えると、4人家族では1週間で140回ものトイレ利用が発生します。食料や飲料水と同じように、携帯トイレやトイレットペーパーも備えておくことが、災害時の衛生環境と生活を守ることにつながります。

長屋 和宏(ながや かずひろ)
国土交通省 国土技術政策総合研究所(国総研)企画課 主任研究官
(つくば科学教育マイスター)
私たちの生活を支える道路や橋などの土木インフラの大切さを知ってもらうために、出前講座などを通じて国総研の活動を分かりやすく発信しています。
特に防災分野では、小中学生の皆さんと一緒に、さまざまな視点で勉強しています。

