南米の低所得農村の植林事業で炭素クレジット
―日本の植林CDM事業では初めて
:国際農林水産業研究センター

上は雨で激しく浸食された土壌、下は植林後の樹木の成長量調査の様子(提供:国際農林水産業研究センター)

 (独)国際農林水産業研究センターは8月26日、温室効果ガス削減の国際的な枠組みである「クリーン開発メカニズム(CDM)」を用いた南米パラグアイでの植林事業で、国連から炭素クレジットを取得したと発表した。日本の植林CDM事業では初めて。温暖化の原因である二酸化炭素(CO2)を日本が6,819t削減したことに相当する。途上国の小規模農家でも参加可能な温暖化対策のモデル事業としてとして活用されることが期待される。

 

■CO2を6,819t削減に相当

 

 CDMは京都議定書で定められた温暖化対策の国際的な仕組みの一つ。先進国が資金や技術を途上国に提供して温室効果ガスを削減すると、CO2の削減量を先進国間で取引できる炭素クレジットとして国連のCDM理事会が承認する。
 同センターはこのCDMを使い、パラグアイで2007年から同国の農牧省や大学、国家森林院と協力、植林事業に取り組んだ。現地調査で小規模農家が劣化した土地での植林に高い意欲を持っていることに注目、農業を続けながら薪や果物などが収穫できる植林事業に取り組んだ。
 併せて、植林による炭素クレジットが農家の収入につながるよう事業の構築に取り組み、小規模農家167戸が参加する合計215ha(ヘクタール、1haは1万㎡)の植林事業を国連CDM理事会に登録した。このうち56戸の合計82haの植林地にバイオマスとして蓄積された6,819t相当のCO2が、8月24日に炭素クレジットとして認められた。
 中南米地域は世界で最も森林減少率が激しく、土地利用変化に伴う温室効果ガスの排出量が極めて高い地域として知られている。ただ、CDM事業の多くは企業投資の形で実施されているため、効率よく炭素クレジットが取得できる大規模な植林事業に限られ、小規模農家が多い途上国での事業はなかなか進まなかった。
 同センターは、植林事業による炭素クレジットを購入すればCO2を削減したと認められるため、同センターは購入を希望する企業の募集をしている。購入資金は植林対象地域の小中学校の教育資材等の購入に充てる計画だ。

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