温暖化による土壌有機物の分解速度変化の要因解明
―有機物自身の分子構造にあることを突き止め
:農業環境技術研究所

 (独)農業環境技術研究所は8月26日、地球温暖化によって土壌有機物の分解が速まる原因が有機物自身の分子構造にあることを突き止めたと発表した。土壌有機物の分解速度が変化することで温暖化がさらに加速すると考えられているが、これまでは原因不明で分解が速まる程度も評価できなかった。温暖化が今後どのように進展するかを評価する気候変動予測モデルの精度向上につながるとしている。

 

■気候変動予測の精度向上へ

 

 土壌有機物は、微生物によって分解されると温暖化の原因である二酸化炭素(CO2)が大気中に放出され、温暖化を加速する可能性がある。土壌有機物に含まれる炭素量は、大気中CO2の炭素量の約2倍、植物に含まれる炭素量の3倍以上とされるため、土壌有機物の分解速度の変化が温暖化に与える影響は極めて大きい。
 そこで研究グループは、土壌有機物の分解が速まる程度を示す数値「温度係数」が土壌の種類や気候条件によって大きく変動するという従来の研究結果に注目。管理の仕方の違いによって有機物の量や質が大きく異なる5つの畑土壌を対象に、温度係数がどう異なるかを詳しく分析した。
 まず、土壌に含まれる炭素がどのような分子構造に組み込まれる形で存在しているかを調べた。その結果、微生物の酵素が分解しやすい「O‐アルキル炭素」と、分解されにくい芳香族と脂肪族の炭素に注目。この割合を指標にすると、実測した土壌の温度係数とよく対応することがわかったため、「土壌炭素の質」と名付けた。
 あらかじめ「土壌炭素の質」を調べれば、温度上昇による土壌からのCO2発生への影響が定量的に予測できるようになり、より精度の高い気候変動予測が可能になると研究グループはみている。従来は、土壌有機物の分解速度が変化する原因が不明だったため、気候変動予測の際に使う温度係数は固定値として計算しており精度向上が困難だった。

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