イネの光合成速度を高める遺伝子を特定
―多収イネ品種の開発の可能性広がる
:農業生物資源研究所/作物研究所/東京農業大学

 (独)農業生物資源研究所と(独)農業・食品産業技術総合研究機構作物研究所、東京農業大学は8月28日、多収イネ品種から光合成速度を高める遺伝子を特定したと発表した。この遺伝子は光合成反応を行う葉肉細胞の数を増やし、光合成速度を高める働きをする。収量性の大きいイネ品種の開発が期待できるという。

 

■光合成を行う葉内部の葉肉細胞を増やす

 

 穀物の多収に関わる遺伝子としては、籾(もみ)の数や穂の大きさなど、炭水化物を貯蔵する能力を決定する遺伝子が近年次々と明らかにされている。しかし、光合成など、炭水化物を作り出す能力を決定する遺伝子の報告はほとんどない。
 研究チームは、日本でトップレベルの多収イネ品種である「タカナリ」が光合成能力の高いことに着目、光合成能力の高さに寄与している遺伝子の特定に取り組み、今回、光合成速度を高める遺伝子「GPS」の単離に成功した。
 GPS遺伝子は、葉を細くする遺伝子として既に知られる「NAL1」と呼ばれる遺伝子の変異型で、光合成を盛んに行う葉内部の葉肉細胞の数を増やし、光合成速度を向上させる働きをしていることが判明した。
 GPS遺伝子は1960年代のいわゆる「緑の革命」に貢献した多収イネ品種「IR8」に由来し、日本に伝わったこともわかったという。今回の解明により新たな品種の作出が期待されるとしている。

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コシヒカリとタカナリ。タカナリは日本で栽培されるイネの中でトップレベルの多収品種(提供:農業生物資源研究所)