マイクロデバイス接合向け表面平滑化技術を開発
―ネオン原子を照射し原子レベルで粗さを除去
:産業技術総合研究所

 (独)産業技術総合研究所は8月28日、原子レベルでシリコン表面を平滑化し、強度の大きい接合を得るマイクロデバイス向けの常温接合プロセスを開発したと発表した。粗いシリコン表面にネオン原子のビームを当てて平滑化するもので、接合部のひずみを低減でき、マイクロデバイスの性能向上につながる技術という。

 

■ひずみ低減し接合強度が向上

 

 開発したのは「表面活性化常温接合プロセス」という技術。表面活性化常温接合は、酸化物や吸着分子などで荒れた固体表面に高速原子ビームを照射するなどしてそれらを除去、平滑化し、活性な表面同士を接触させて常温下で原子間結合により接合する。
 産総研は、三菱重工業(株)と協力してこれまでに実用的な接合装置を作製、MEMS(微小電子機械システム)をはじめとした様々なマイクロデバイスづくりに利用されている。しかし、MEMSの作製過程などで接合表面が荒れてしまった場合、接合部のひずみが増大し接合が困難になるという課題があった。
 この対策として従来アルゴンの高速原子ビームを用いる方法があるが、接合強度が得られない場合があるなどの問題を抱えている。
 研究チームは今回、不活性ガスの中では比較的軽いネオンに着目し、アルゴンの代わりにネオンを高速原子ビームのガス種として用いるプロセスを考案、常温接合の可能性を評価した。
 その結果、ネオン高速原子ビーム照射により非常に平滑な表面が得られ、接合部のひずみが低減して接合強度が向上することが確認できたという。
 今後、MEMS開発企業と連携して応用を広げ、その市場の拡大につなげたいとしている。

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(a)は平滑化が不十分なシリコン表面同士の接合界面、(b)は十分に平滑化されたシリコン表面同士の接合界面の透過型顕微鏡写真。シリコンの接合界面付近の白黒のコントラストがひずみを表している(提供:産業技術総合研究所)