植物由来の非食用油で新しい界面活性剤
―酵母を利用した量産技術を開発
:産業技術総合研究所/アライドカーボンソリューションズ/琉球大学

 (独)産業技術総合研究所とバイオ関連企業のアライドカーボンソリューションズ、琉球大学、は8月29日、食用には使えない非可食バイオマスの一つである植物油から高性能界面活性剤を量産する技術を開発したと発表した。石油を原料にする従来の合成界面活性剤に比べても少量で高い活性を発揮するため、環境負荷の少ないシャンプーや台所洗剤などトイレタリー製品に広く応用されると期待される。

 

■高機能、サンプル供給を開始

 

 原料の植物油は、熱帯・亜熱帯に生育するアカテツ科の常緑樹「マフア」の種子を絞って得られる。インドではバイオ燃料などとして使われている。バイオマス利用では食料生産と競合することが危惧されているが、マフア油は食用にはならない非可食バイオマスなので、その心配はないという。
 研究グループは、このマフア油を原料に、より付加価値の高い化学製品を作ることを目指して共同研究に取り組んだ。まず、産総研がマフア油を原料に、発酵法で界面活性剤を作り出す微生物の探索を進めた。その結果、10数種類の菌株の中から、効率よく界面活性剤を作る酵母を探した。
 さらに、酵母が作った界面活性剤の分子構造も解明。その機能について詳しく調べたところ、非常に低濃度でも洗浄能力などの界面活性が優れており、高機能の界面活性剤として使えることがわかった。琉球大学と産総研は共同で、発酵時に使う培養液の組成や培養条件の最適化を進めて基盤技術を確立。その技術をもとにアライドカーボンソリューションズ社が量産化にめどをつけた。
 同社は、すでに関連業界各メーカーにサンプル供給を開始、早ければ今秋にも新界面活性剤を使用した製品が生産されるという。
 界面活性剤は国内だけでも年間100万t以上が生産され、シャンプーなどの日用品から、機械、建築、土木など幅広い産業で使われている。現在、界面活性剤の多くは石油を原料にして合成されているが、環境や生体への負荷がより少ない植物由来の界面活性剤の開発が求められていた。

詳しくはこちら