ゴム表面をナノレベルの精度で金型成形
―カーボンナノチューブを添加する新技法を開発
:産業技術総合研究所

 (独)産業技術総合研究所は8月28日、従来のゴムではできなかった数百nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)の精度でゴム表面を金型成形する技術を開発したと発表した。網目状の単層カーボンナノチュ-ブ(CNT)をゴムに混ぜ込んだことで、これがゴムの中で支持材として働き、これまでのゴムではできなかった精度を実現させることができた。この技術により、濡れ性・密着性・光学特性を制御した高機能ゴムへの応用が期待される。

 

■ニトリルゴムなど軟らかなゴムでも加工

 

 ゴムの表面加工には金型成形加工が知られているが、ゴムは弾性があるので、ナノメートル、マイクロメートル単位での精密な表面加工は事実上できなかった。今回、産総研の研究チ-ムは、網目構造の単層CNTをゴムに混ぜて分散させることでゴムの柔軟性と細かな形状維持特性の両立に成功した。
 研究グル-プは、ゴムとしてフッ素ゴムを用い、単層CNTを分散させた有機溶媒とフッ素ゴムを溶かした有機溶媒を混合して成形材料を作製。膜状の材料を平坦な基板と微細なピラミッド型をした金型で挟み、ゴムが軟化する温度まで加熱後に圧力を掛け、室温まで冷やしてから金型を外すと、写真のように金型の微細なピラミッド型の形状が正確に転写された。従来のゴムではピラミッドの先端やエッジが丸まり、正確には転写できなかった。
 また、今回開発した手法は、ニトリルゴム、アクリルゴムといったフッ素ゴムより柔らかなゴム材料にも同様の効果があることも分かった。産総研としては今後、産業界、特にゴムメーカーにニーズの調査を行うとともに、興味を持つ企業と連携、高機能化した高精密加工ゴムの新用途開拓を進めるとしている。

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プレス成形加工した単層CNT・ゴム複合材料(左)と従来ゴムの表面(提供:産業技術総合研究所)