光ファイバーでイオンエンジン内部現象を計測
―性能の向上で小惑星探査機など、より遠い宇宙へ
:宇宙航空研究開発機構/日本電信電話

 (独)宇宙航空研究開発機構(JAXA)と日本電信電話(株)=NTTは8月7日、宇宙空間で小惑星探査機などを推進するマイクロ波放電式イオンエンジン内部のプラズマ中のマイクロ波電界計測に世界で初めて成功したと発表した。イオンエンジンの性能向上が図れるため、探査機の長寿命化や、より遠方の惑星を目指した飛行が期待できるという。

 

■感度安定性、高い耐磁界性・耐熱性もつ

 

 イオンエンジンはマイクロ波放電などでイオン化した推進剤を強力な電界で加速し、高速で噴射して推進力を得るエンジン。その性能向上にはエンジン作動中のイオン化した状態(プラズマ状態)におけるマイクロ波電界の分布測定が求められる。
 従来この測定には環境中の電磁波などの測定に用いられているいわゆる金属プローブ(探針)が使われてきたが、電磁波の散乱が生じ、正確な測定が難しいという問題があった。
 そこでJAXAはNTTが開発した、金属ではなく光ファイバーを利用したEOプローブ(電気光学プローブ)という電界測定技術に着目し共同研究を進め、今回、感度安定性、耐磁界性、耐熱性の高いEOプローブを開発した。
 イオンエンジン内のマイクロ波電界をこのプローブを用いて測定したところ、マイクロ波が伝搬できなくなるマイクロ波カットオフ現象を緩和すると、イオンエンジンの性能を向上できることが分かったという。
 今後、小惑星探査機をより遠くの惑星に到達させることが可能になるという。

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EOプローブは、電界中に置かれたEO結晶の屈折率が変化する物理現象(ポッケルス効果)を利用。電磁波が照射されるとポッケルス効果により結晶の屈折率が変化して結晶内を伝搬する光の位相が変化、この変化から計算して電磁波の電界を測定。 光ファイバーは、光を結晶まで伝搬するために使用(提供:JAXA)