「認知機能」と「動機付け機能」は別系統
―ドーパミン産生神経細胞の働きを突き止める
:筑波大学/京都大学

 筑波大学の松本正幸教授と京都大学霊長類研究所の高田昌彦教授は8月9日、うつ病などの精神疾患に深く関わる神経細胞が、意欲などの動機づけ機能と作業記憶などの認知機能を担う2つのグループに分かれていることを突き止めたと発表した。サルを用いた行動実験で明らかにした。意欲障害と認知機能障害を併発する精神疾患のメカニズム解明や治療に役立つと期待される。

 

■サルの行動実験で明らかに

 

 今回、2つのグループに分かれることが明らかになったのは、 餌がもらえるなど大きな報酬が予測されたときに動物の脳内で活発に放出される神経伝達物質「ドーパミン」を産生する神経細胞。ドーパミンは動物のモチベーションを高める働きを持ち、その産生神経細胞に異常が生じるとパーキンソン病やうつ病などに見られる意欲障害が起きる。ただ、多くの場合に意欲障害だけでなく認知機能障害を併発するため、研究グループはドーパミン産生神経細胞が認知機能にもかかわっているのではないかと考えた。
 そこで実験では、モニター上に特定の角度に傾けた線分を表示してサルに記憶させ、その後に複数の線分を表示、同じ角度の線分を選んだときにだけ報酬としてジュースを与える行動実験を行った。サルの脳には電極を刺し、ドーパミン産生神経細胞の活動も同時に記録した。
 この結果、モニターに記憶すべき線分を表示したときには産生細胞の活動が上昇したのに対し、記憶する必要のない線分を表示しても活動は上昇しなかった。さらに、記憶すべき線分の表示で活動が上昇したドーパミン産生神経細胞は脳の特定領域に集中しており、それ以外の領域では報酬をもらったときにだけ活動が上昇した。
 このことから、研究グループは「ドーパミン産生神経細胞が作業記憶などの認知機能を担うグループと、動機付け機能にかかわるグループに分かれていることがわかった」と結論付けた。

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