新星爆発の瞬間の「火の玉」観測
―ISS搭載の「全天X線監視装置」がキャッチ
:宇宙航空研究開発機構/理化学研究所

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全天X線監視装置「MAXI(マキシ)」がとらえた新星爆発と想像図(提供:JAXA)

 (独)宇宙航空研究開発機構(JAXA)と(独)理化学研究所は11月14日、暗くて小さな星が突然1万倍もの明るさで輝き出す新星爆発の瞬間を初めて観測することに成功したと発表した。輝き出す直前の爆発初期に放出されるX線を検出、その強度が通常の新星爆発の約100倍だったことをとらえた。従来の理論予測を超える現象であり、連星進化モデルの見直しなど天文学に大きな影響を与えるとみている。

 

■「新星爆発理論の修正迫るもの」

 

 爆発の瞬間は、地上400kmの軌道上を回る国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟「きぼう」の船外実験プラットホームに搭載した全天X線監視装置「MAXI(マキシ)」がとらえた。4年前に運用を開始した装置で、宇宙のあらゆる方向からやってくるX線を常時監視していた。
 この装置が地球から22万光年の距離にある小マゼラン星雲の東端に、強いX線の閃光を放射する星を発見した。X線は波長の長い軟X線で、米航空宇宙局(NASA)の協力も得て詳しく解析した結果、新星爆発によって放出されたものであることを確認した。
 新星爆発は、二つの恒星が互いの周囲を回転する連星系で起きる。白色矮星や恒星が爆発で吹き飛ぶ超新星爆発と異なり、一方の恒星が燃料となる水素を使い果たして暗く小さな白色矮星になった後、もう一つの恒星から水素を供給されて白色矮星の表面で爆発的な核融合反応が起きるのが新星爆発だ。また今回、爆発のあった連星系は、年老いた白色矮星と若い大質量恒星(Be星)との組み合わせという珍しいタイプであることが明らかとなった。
 新星爆発では、爆発開始直後に白色矮星全体が高温のガスに包み込まれる「火の玉」になることが知られており、今回観測した軟X線は、白色矮星の表面上で起きた爆発の開始後約1時間の間に「火の玉」から放射されたものであることが分かった。新星爆発で軟X線の閃光が放射されることは理論的に予測されていたが、従来は高感度の全天軟X線監視装置がなく、「火の玉」段階の現象は観測できなかった。
 研究グループは、今回の観測結果について軟X線の強度が通常の約100倍と極めて大きかったことなどに注目、爆発した白色矮星の質量が理論最大値を超えている可能性もあることから、「新星爆発の理論の修正を迫るものだ」としている。

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