[編集発行] (公財)つくば科学万博記念財団 [協力] 科学技術振興機構(JST)・文科省研究交流センター

つくばサイエンスニュース

わかる科学

痩せたウニでもクローバーを食べて商品価値アップ!

(2019年8月01日)

養殖カゴ内でクローバーを食べるムラサキウニ
(写真提供/九州大学大学院農学研究院助教 粟田喜久)

 高級寿司ネタとして知られるウニは、旨味成分を豊富に含むコンブなどの海藻をエサにしているからこそ美味しいのであって、海藻を食べていないと身が痩せて、決して美味しいと言えるものではありません。そのため美味しいウニを食べ続けるには海藻が繁茂する藻場を守っていかなければならないのですが、近年、ウニが大量発生して海藻類を食べ尽くす「磯焼け」が各地で発生して大きな問題になっています。

 磯焼けの海にいるウニに商品価値がなくても、磯焼けを食い止めるために採らなければなりません。採ったウニは売り物にならないだけでなく、処分するのにお金がかかってしまうため、藻場の回復に取り組む漁業関係者にとって大きな負担になっています。痩せたウニでも、エサとして海藻を与えて一定期間飼育すれば、商品価値を高めることはできますが、そもそも磯焼けが発生している場所でウニを駆除しているのですから、海藻を入手することは不可能です。

 そこで九州大学大学院農学研究院の栗田喜久助教、宮城大学食産業学群の西川正純教授、片山亜優助教らの研究グループは、海藻に代わりにウニの商品価値を高められるエサを探し求め、クローバーの名前で知られるマメ科植物のシロツメクサに注目しました。シロツメクサはヨーロッパ原産ですが、1846年にオランダから持ち込まれて以降、日本全国に分布を拡大。現在ではほぼ全国に自生していて、容易に入手できます。

 このシロツメクサを約2か月間、キタムラサキウニに与えたところ、コンブを与えた時と同じように成長することを確認し、商品価値の基準のなる色についてはコンブを食べさせたウニよりも鮮やかになることも明らかになりました。成分を分析した結果、味に関わるアミノ酸などがコンブを与えて育てたウニと同等で、血液中の中性脂肪を下げ、皮膚の健康維持に役立つとされるα-リノレン酸が豊富に含まれていることが分かり、シロツメクサを与えることで駆除したウニの品質を高められることが確かめられました。

 これなら磯焼けが発生して海藻類の入手が難しい地域でも、シロツメクサを用いて、ウニの品質を高められるでしょう。その結果、ウニの駆除が進んで藻場の回復が進めば、本来の海洋生態系の再生につながると期待されます。

 

子供の科学(こどものかがく)

 小・中学生を対象にしたやさしい科学雑誌。毎月10日発売。発行・株式会社誠文堂新光社。
最新号2019年8月号(7月10日発売、特大号のため定価800円)は、この夏必見の「恐竜」特集!日本で発見された恐竜の歴史をたどりながら、大注目のむかわ竜発見まで紹介していきます。むかわ竜のペーパークラフトに加え、別冊付録にはmicro:bitを使ったプログラミング自由研究Bookがついています。その他、先日撮影されたブラックホール写真の謎に迫る特集など、読み応えのある記事が満載!
記事執筆:斉藤勝司
 https://kodomonokagaku.com/