[編集発行] (公財)つくば科学万博記念財団 [協力] 科学技術振興機構(JST)・文科省研究交流センター

つくばサイエンスニュース

わかる科学

固まるスムージーのナゾ

(2017年4月01日)

 今日から新学期。気分も新たに、去年はできなかったことにチャレンジしようと思ういい機会。今年は健康のことを考えて、トマトジュースを毎日飲むことにしよう。
 トマトジュースは、トマトをミキサーにかけたら出来上がり。そのままでもいいし、塩コショウで味を整えてもいい。生のトマトの味がわかる美味しいジュースだ。でも、毎日こればかりじゃ飽きてしまう。そうだ、今日は冷蔵庫にバナナと牛乳があるから一緒にミキサーにかけてみよう!隠し味にレモン汁も加えてみよう…。
 
 すると、なんとびっくり。ミキサーにかけたジュースが固まってしまった!コップを逆さにしてもこぼれてこない、これは一体どういうこと?
 
 

 実はこれ、牛乳に含まれるタンパク質と、レモン汁とトマトに含まれる酸が反応して、タンパク質が固まってしまったのです。

 タンパク質は、20種類ほどのアミノ酸が多数連結し、それが折れ曲がって立体構造を作る高分子です。熱や酸、かき混ぜるといった刺激が加わると、その構造が変わります。これを変性といいます。
 例えば、生卵をゆでるとゆで卵になる(熱変性)、卵白をかき混ぜるとメレンゲができる(表面変性)。生卵にはタンパク質が多く含まれているので、これらはその性質を上手に利用した調理法と言えるでしょう。そして、酢漬けにした魚の表面は、白く硬くなります(pH変性)。この性質が、今回の固まるジュースの現象に近いものです。牛乳のタンパク質が、レモンとトマトの酸の刺激によって変性し、タンパク質同士がくっつきやすくなり、固まりができるのです(凝集)。カッテージチーズを作る際にもこの作用を用いて、牛乳にレモン汁を加えて固めていくのです。

 身近な食べ物にも、不思議な科学がひそんでいます。それぞれの性質を考えて上手に実験をして、とびきり美味しいオリジナルレシピのジュースを作ってみてはいかが? 

ねこたけ(ペンネーム)
役に立つこと、立たないこと。いろんなことがあるけれど、とにかく「知らないコト」を「わかった!」にたどり着くまであれこれ考えるのが好き。得意分野は「キッチンサイエンス」。身近な「科学」を、わかりやすくお伝えします。