[編集発行] (公財)つくば科学万博記念財団 [協力] 科学技術振興機構(JST)・文科省研究交流センター

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わかる科学

ビル風の乱流を予測しドローンの安全飛行をめざす

(2020年2月05日)

新宿の高層ビル街で行われた実証実験のようす。
都市乱流予測システムの画面には乱気流の大きいところが示されている。(日本気象協会提供)

 小型のドローンを配送や物流、さらには災害時の情報収集や緊急物資の輸送などに使おうという試みが進められています。しかし、気象環境によって運航の安全性が大きく左右されるという課題があります。最大の敵は強風や乱気流です。また熱や雨によって衝突防止センサー等の性能が低下する恐れもあります。

 この影響を最も大きく受けるのが大都市、とくに超高層ビル街での飛行です。超高層ビルが乱立しているエリアでは、風が複雑な流れとなり、乱気流を発生させています。また、アスファルト面からの照り返しによる高温やゲリラ豪雨などの都市特有の激しい気象現象は、ドローンの飛行に大きな影響を与えます。

 そこで、日本気象協会・防災科学技術研究所・東京工業大学の研究グループは、ドローン・自動走行ロボットなど、これから大都市で重要な役割をになう無人移動体の運航のために、大都市特有の気象現象を、観測・解析・予測する技術を開発し、一元的に運航者に提供できる「都市気象プラットフォーム」の開発を進めています。

 今回は、「都市気象プラットフォーム」の研究開発で試作された「都市乱流予測」システムを東京新宿で行われたドローン飛行実証実験に試験的に提供。その有効性を検証しました。この乱流予測システムは、新宿の高層ビルエリアを対象としたもので、2mメッシュ・5分間隔でビル風・突風・乱気流を予測するものです。実験の結果、ドローンの安全運航に有効であることが確認できました。

 研究開発は、JST未来社会創造事業の一環として、日本気象協会が都市気象情報プラットフォームの全体の検討、防災科学技術研究所が都市気象観測及び客観解析の研究、東京工業大学が都市気象予測技術の研究と分担して行われました。研究グループは、これからはさらなる予測精度の向上に取り組むとしています。

 ドローンの飛行にもっとも影響を与えるのが強風や乱気流です。ドローンの速度は遅いので、向かい風が強いとなかなか前に進めず、バッテリー容量に限りがありますから航続距離をかせぐことができません。また、乱気流は飛行の安定を大きく乱し、最悪の場合は墜落してしまいます。

 また、ドローンは、なにか不具合があった場合、地上の人や物件に影響を与えないように、安全な飛行経路を指定して行うことになるでしょう。その飛行経路を選定するときにも、都市乱気流予測システムが役立ちます。

実証実験の風景(日本気象協会提供)

 

 

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記事執筆:白鳥敬
 https://kodomonokagaku.com/