[編集発行] (公財)つくば科学万博記念財団 [協力] 科学技術振興機構(JST)・文科省研究交流センター

つくばサイエンスニュース

ここに注目!

RISTEXにおける「総合知」と「トランスディシプリナリー研究」のご紹介 -Part2-

(2022年8月01日)

トランスディシプリナリー研究

 トランスディシプリナリー研究とは、「自然科学分野と人文・社会科学分野との学際的連携と、アカデミア以外の多様な関係者との共創を指す」研究です。「超学際研究」と訳されることがありますが、これは学際研究の拡張版であるかのような誤解を生みやすいため、JST・研究開発戦略センターが、OECD科学技術イノベーションポリシーペーパー(88号)の日本語仮訳※1で使用している「学際共創研究」という表現を使用したほうが適切であろうと思われます。知識のユーザーを研究のステークホルダーと位置付けて、共創的研究を展開することを意味しているからです。

 

※1JST/CRDS「日本語仮訳:トランスディシプリナリー研究(学際共創研究)の活用による社会的課題解決の取り組み OECD科学技術イノベーションポリシーペーパー(88号)」、CRDS-FY2020-XR-01(2020年10月)

 

 RISTEXは設立当初から、書斎に閉じる学問、実験室に閉じる学問ではなく、成果が社会で活用される場面の創出までを視野に入れた研究を求めてきました。これは容易なことではありませんが、少なくとも、知識のユーザー(社会的課題の解決を求めている人々)を巻き込み、彼ら彼女らの求めに耳を傾けつつ研究開発に取り組むための工夫を凝らしてきたことは確かです。海外でも同様の発想が「トランスディシプリナリー型」の研究や活動として実施されています。

 RISTEXが推進している、社会課題解決に向けた研究開発は、その課題にさまざまに関与するステークホルダーとの共創を重視しているため、程度の差はあれ、広義のトランスディシプリナリー的な研究開発といえます。とりわけ、平成14年~令和元年までRISTEXで実施したFuture Earth構想の推進事業では、明示的にトランスディシプリナリー研究の方法論開発を掲げた公募型の研究開発に取り組んできました。

 RISTEXは、これら研究開発で培った知見を活かし、我が国のTD研究の動向を把握し、今後さらに日本のTD研究を推進していくため、令和2年度より、日本のTD研究を推進していくためのエビデンスを得るための調査活動を実施しています。

 トランスディシプリナリー研究の動向調査の詳細はこちらをご覧ください。

 

 令和2年度は、RISTEXのフューチャー・アース構想の推進事業で実施した調査研究および課題解決に向けたトランスディシプリナリー研究、そしてJST が参加しているベルモント・フォーラムの多国間共同研究のうち、日本で実施してきた研究の蓄積をふり返りました。さらに、地球規模課題のマッピングとその中における日本の強みや課題の可視化を進めました。

 

 令和3年度には、地球規模課題に取り組むTD研究推進に資する情報とするため、以下の調査を実施しました。

 

①地球規模課題の捉え直しのための基礎調査:SDGsやCOVID-19の観点から、地球規模課題の近年の動向把握を試みました。

②人文・社会科学系の研究成果の評価に関する調査:TD研究はしばしば「自然科学と人文・社会科学の学際連携+ステークホルダーとの共創」と説明されま す。その「人文・社会科学」の評価について、近年の動向を調査しました。

③ベルモント・フォーラムCRA関連研究の国内研究実施状況調査:フューチャー・アース構想と連動するベルモント・フォーラムでは、地球規模課題に関する多国間共同研究を助成しておりJSTもそのメンバーです。このベルモント・フォーラムの枠組みを活かすことのできる地球規模課題のTD研究とはどのようなものかを可視化するための調査・分析をR2年度調査に引き続き実施しました。

 

 

 TD研究に関する政策動向や、今後のTD研究の推進の重要性については、RISTEX設立20年の節目で実施したRISTEXセンター長小林 傳司と、RISTEXの起源や発展に尽力頂いた有識者との対談記事もご参照ください。

  • 〈RISTEX20年ふり返り対談3〉小林信一×小林傳司

蓄積と継承のしくみを求めて~「社会技術研究フォーラム」に込められていた意味~

  • 〈RISTEX20年ふり返り対談4〉有本建男×小林傳司

社会技術をささえ、未来へつなぐ~研究開発の企画・マネジメントの視点から~

 

おわりに

 RISTEX公式Webサイトでは、TD研究や「総合知」の他にも、SDGsの取り組み、COVID-19関連の取り組み、ELSI/RRIの取り組み、東日本大震災や熊本地震の際の震災復興支援活動など、多様な取り組みをご紹介するコンテンツが準備されています。是非RISTEX公式Webサイトを覗いてみてください。

RISTEX公式Webサイト(TOPページ) 

RISTEX公式Webサイト(多様な取り組み) 

 

 また、RISTEX設立から20年を迎えたことを機に、社会技術とRISTEXのこれまでを振り返る企画コンテンツを公開しました。TD研究や「総合知」にも関係した以下のコンテンツが掲載されていますので是非ご覧ください。サイトの内容(一部短縮)を冊子にまとめたPDFも掲載しています。

RISTEX公式Webサイト(社会技術-RISTEX 20年のあゆみ)

 

(コンテンツ)

  • 社会技術の20年をふり返る~多様な知の組み合わせによる社会課題解決の研究開発~
  • 〈RISTEX20 年ふり返り対談 1〉吉川弘之×小林傳司
  • 〈RISTEX20 年ふり返り対談 2〉村上陽一郎×小林傳司
  • 〈RISTEX20 年ふり返り対談 3〉小林信一×小林傳司
  • 〈RISTEX20 年ふり返り対談 4〉有本建男×小林傳司

国立研究開発法人 科学技術振興機構 社会技術研究開発センター(JST-RISTEX) 
広報担当