光触媒の酸化チタンの表面構造を解明
―ナノ粒子担体として利用研究など加速へ
:高エネルギー加速器研究機構/北海道大学ほか(2016年2月24日発表)

 高エネルギー加速器研究機構(KEK)と北海道大学、(国)日本原子力研究開発機構の研究グループは2月24日、30年来不明であった光触媒の酸化チタン(TiO2)の表面構造を解明したと発表した。表面の触媒特性の理解が一段と進み、応用研究にはずみがつくとしている。

 

■30年来の数多くの構造モデル提案に決着

 

 一般に固体の表面は内部と同じ構造のままでは不安定なことが多く、熱処理すると、表面にその固体特有のさまざまな構造が生じる。研究グループは今回、超高真空下約900℃の高温で処理して得られる超周期構造を持つ表面を調べた

 この超周期構造表面は複雑で大きな起伏を持っており、最近はその起伏を生かして、触媒活性を持つナノ粒子の担体として利用する研究が進められている。ただ、起伏に富んだ複雑さから詳細な原子配置を決めることは難しく、30年来、数多くの異なる構造モデルが提案されていた。

 研究グループはKEKが独自開発した全反射高速陽電子回折(TRHEPD)法という手法を用い、表面構造の解明を試みた。TRHEPDは陽電子の電荷が正であるために表面で全反射され、高感度で物質の最表面を調べることができる。

 世界最高強度の高輝度陽電子ビームを用いて実験した結果、結晶最表面の原子配置を精度よく決定することに成功、この問題に決着をつけることができたという。

 今回の解明により、酸化チタンの光触媒特性をはじめ、活性ナノ粒子と担体の相互作用などの研究の進展が期待できるとしている。

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