炭素触媒の活性点形成の窒素種を特定
―レアメタル白金に代わる燃料電池触媒開発へ道
:筑波大学(2016年1月22日発表)

 筑波大学は1月22日、高価な白金に代わる燃料電池用の炭素触媒の活性点を形成する窒素種を特定したと発表した。炭素に窒素を導入した材料が、燃料電池で高い触媒反応をすることは以前から知られていたが、どの部位で触媒反応が起きているかが明らかでなかった。この解明によるり、安価で豊富な炭素触媒の設計指針が明確になり、燃料電池の普及に拍車がかかると期待される。

 

■安価で豊富な燃料電池の触媒開発に期待

 

 燃料電池は水素と酸素から電気を取り出す発電装置で、二酸化炭素や有毒ガスなどを排出しない優れた特徴を持っている。しかし、電極で触媒材料として使われる白金が希少なことが普及を妨げる要因の一つとなっている。

 これまで、複数研究グループにより炭素素材に窒素を導入することで白金のような触媒性能をもつことが報告されている。しかし、実働環境下では白金に及ばないというのが実情。原因の一つが触媒機能をもたらす部位(触媒活性点)が特定できないということがあげられる。触媒活性点が特定できれば、活性点の密度を増やすように設計ができる。

 そこで筑波大は特定の窒素種だけをもつ4種類のモデル触媒を調整し、調べたところ、炭素との結合を2つ持つ「ピリジン型窒素種」を導入した炭素触媒の活性が高いことを突き止めた。

 さらに、炭素材料のどの部位に活性点ができたのかをエックス線光電子分光などで測定したところ、触媒活性点はピリジン型窒素の隣の炭素塩基と特定した。これによりグラファイト系炭素材料を用いた燃料電池の電極触媒の設計指針が明確になったという。

 これで白金に代わる安価な炭素触媒の開発に弾みがつき、燃料電池の普及が早まると期待される。

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窒素導入グラファイトに含まれるさまざまな種類の窒素種(提供:筑波大学)