ブドウの果皮の色の決定を遺伝子レベルで解明
―温暖化に向け効率よい優良品種の開発に力
:農業・食品産業技術総合研究機構(2015年6月23日発表)

 (国)農業・食品産業技術総合研究機構は6月23日、同機構果樹研究所の研究で、赤紫色をしたブドウの皮の色を決めている遺伝子が染色体のどこにあるかを突き止めたと発表した。温暖化が進む中で皮の色づきが悪くなって市場価値が下がることが問題になっているが、今回の成果により約3年後には高温環境下でも濃い紫色や鮮やかな赤色の実をつける優良品種作りを効率よく進められるようになると期待している。

 

■「DNAマーカー」の開発に取り組み

 

 ブドウの皮の色は数種類のアントシアニン色素の組み合わせで決まる。ただ、その組み合わせがどのような仕組みで決まるかは、これまで分からなかった。そこで同研究所は、「巨峰」や「シャインマスカット」など日本で多く栽培されている欧米雑種ブドウを対象に、これらの色素の組み合わせを決める遺伝子が染色体のどこにあるかを調べた。

 その結果、果皮を赤から紫色に制御する遺伝子が存在する領域「遺伝子座A」が19本あるブドウの染色体のうち第1染色体上に、また果皮の色調の安定化や深い赤色にする遺伝子領域「遺伝子座B」が第2染色体上にあることを発見した。

 さらに遺伝子座Aには3タイプの遺伝子型があり、このうちタイプ1では赤色系の、タイプ2では紫色系のアントシアニンを多く蓄積することが分かった。また、タイプ3はそれらの中間的な色調を示すことが判明した。一方、遺伝子座Bには4タイプの遺伝子型があり、深い赤色を示すアントシアニンの蓄積量やその安定化と深くかかわっていることを突き止めた。

 これらの成果を利用すれば、ブドウの葉などから抽出したDNA(デオキシリボ核酸)で果皮の色調を容易に推定できるようになる。同研究所はすでにそのために必要な技術「DNAマーカー」の開発に取り組んでいる。約3年後には幼い苗の段階で果皮の色調を予測できるようにし、最低でも3年かかるといわれるブドウの優良品種開発の期間を大幅に短縮したいとしている。

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