天然より100倍明るく持続性も7倍に
―人工発光酵素を開発、アミノ酸再配列で能力アップ、
:産業技術総合研究所

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今回開発した人工生物発光酵素ALuc(提供:産業技術総合研究所)

 (独)産業技術総合研究所は11月26日、ホタルや発光プランクトンなどの生物が自ら光を放つために持っている発光酵素に比べ100倍もの強い光を出す人工酵素を開発したと発表した。天然の発光酵素を構成するアミノ酸の配列を詳しく分析、再配列することで発光能力を大幅に向上させることに成功した。病気の診断や環境測定など診断・計測技術の高性能化が期待できる。

 

■発光プランクトンのカイアシ類の酵素を分析

 

 開発したのは、産総研計測技術グループの島村政基・研究グループ長と金誠培・主任研究員。
 研究では、まず微小な甲殻類「カイアシ類」の一部が、発光プランクトンとして分子量が小さくて強い光を出す発光酵素を持つことに注目。10種類以上のカイアシ類の酵素がどのようなアミノ酸で構成され、それらがどのように配列しているかを比較・分析した。
 この結果、一定の規則に従ってアミノ酸の配列を変えて酵素を作りかえてやると、発光したときの輝度と安定性が著しく改善できることを突き止めた。実験では、これらの発見をもとに新たなアミノ酸配列を設計、それに基づいてアミノ酸をつなぎ合わせて多数の人工生物発光酵素を試作した。
 これまでに知られていた天然の発光酵素では、カイアシ類やサンゴの仲間であるウミシイタケの酵素が最も明るい光を出せるとされていた。これに対し、今回試作した人工発光酵素群には、最大で100倍も明るく、約7倍も長い発光持続性を発揮するものがあることがわかった。
 生物が体内の発光酵素の触媒作用を使って化学エネルギーを光に変える現象は、2008年に下村脩博士がノーベル賞を受賞したことでもよく知られている。発光酵素を特定のタンパク質と結合するマーカー分子にくっつけて体内に入れると、病気の患部を光らせて見せることなどが可能なため基礎研究や医療診断などに使われている。ただ、本格的な産業応用には明るさや発光持続性の改善など高性能化が求められていた。

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