高出力リチウムイオン電池用の新電極を開発
:筑波大学

 筑波大学は3月14日、プルシャンブルー化合物と呼ばれる鉄やマンガンなどから成る三次元構造ポリマーを用いてリチウムイオン電池の正極(プラス極)を作り、高速充放電テストに成功したと発表した。
 新開発の正極は、ナトリウムイオンにも有効なので、高出力リチウムイオン電池だけでなく、安価なナトリウムイオン電池実現の突破口にもなると期待される。
 コンピューターや携帯端末から電気自動車などまで幅広い用途の電源に使えるリチウムイオン電池の正極材料の主流は、金属酸化物系で、実用化しているコバルト酸リチウムなら1g当たり140mA(ミリアンペア)時の電気を蓄えられる。このようにリチウムイオン電池の電気量容量は、大きいが出力密度が小さく、一気に大電流量が取り出せない。この出力密度を上げるには、リチウムイオンが高速で電極に出入りできるようにすればよい。
 開発グループは、鉄やマンガンなど組み合わせた三次元ポリマー構造のプルシャンブルー化合物に注目した。この化合物は、構造的にリチウムイオンの出入口が大きく、経路が三次元的に広がっているので、リチウムイオンの高速出し入れが可能と考えた。そこでインジウム・スズ酸化物の透明電極の上にリチウム、マンガン、鉄などを含むプルシャンブルー化合物をメッキの要領で析出させた薄膜を作り、正極材料として評価した。
 その結果、36秒の非常に早い放電でも高い起電力と高い容量を示し、放電速度向上のため材料をnm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)サイズまで微細化してテストしたところ、僅か1秒という驚異的な速さでの放電完了が実現した。これから出力密度を計算すると、1g当たり720W(ワット)になる。
 研究者は、安価な鉄とマンガンのプルシャンブルー化合物がリチウムイオン電池の優れた正極材料であることが実証されたことから、次は粉末試料での同様特性の実現を目指す。

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