カイコの蛹(さなぎ)への変態抑制する遺伝子を発見
:農業生物資源研究所/東京大学

 (独)農業生物資源研究所と東京大学は3月14日、カイコの蛹への変態を抑制する遺伝子を突き止めたと発表した。この遺伝子が壊れたカイコは、昆虫に特有の幼若ホルモンを作ることができないため、早期に変態してしまい、蛹も成虫も小型になるという。害虫を早期に変態させて作物の被害を少なくする新たな薬剤の開発などに結びつく成果としている。
 カイコの幼虫は、通常4回幼虫脱皮を繰り返し、そのあと蛹へと変態し、さらにもう一度変態して成虫になる。ところが、「2眠蚕(にみんさん)」と呼ばれる突然変異のカイコは2~3回しか幼虫脱皮せずに蛹になり、極めて小さい成虫になる。
 そこで研究グループは、突然変異体の2眠蚕になる原因遺伝子を遺伝子絞込み手法を用いて調査した。その結果、2眠蚕では「CYP15C1」という遺伝子が壊れており、正常に機能していないことが分かった。CYP15C1遺伝子によって作られるタンパク質を調べたところ、このタンパク質は幼若ホルモンの合成に必須の酵素であることが判明、CYP15C1遺伝子は幼若ホルモンの合成に関与していることが明らかになった。
 遺伝子組み換え技術を用いて2眠蚕にCYP15C1遺伝子を導入したところ、その幼虫は正常なカイコと同様に4回脱皮して大きく成長し、その後正常な蛹へと変態した。
 幼若ホルモンには、蛹への変態を抑制する働きがあり、このホルモンを持たない2眠蚕は早期に変態すると考えられるという。幼若ホルモンを持たない昆虫の変異体が同定されたのは世界でも初めてという。

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