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やせ型でもメタボ?―早食い、喫煙等が関連疾患のリスクに:筑波大学

(2021年11月1日発表)

 筑波大学は11月1日、肥満の有無にかかわらず喫煙や早食い、多量の飲酒などが心疾患や脳血管疾患の高リスク要因になる可能性が高いと発表した。肥満が心疾患などにつながりやすいことはメタボリックシンドローム(メタボ)としてよく知られているが、約5万人の男女の健康診査データを分析したところ、やせ型でも多量の飲酒や喫煙などが心疾患や脳血管疾患の高リスク要因になることを明らかにした。

 筑波大の武田文教授は国内の製造業5社の健康保険組合に協力を得て、40~64歳の男女4万7,172人の特定健康診査データを分析した。非肥満者と肥満者のそれぞれについて体重や身長、血圧、血糖値、脂質に関する検査値や性別、年齢に加え、メタボの判断基準とされる高血圧、高血糖、脂質異常について調べた。

 その結果、腹囲やBMI(体重と身長で決まる肥満度指数)から見て肥満と判断されない人でもメタボに伴うリスクがあることが分かった。具体的には、男性、喫煙、歩く速度が遅い、早食い、1日当たりの酒量が多い、20歳の時に比べて体重が10kg以上増加していることがリスク要因であることが明らかになった。一方、定期的な運動をしていないことが高血圧や高血糖、脂質異常というリスク要因と関係しているのは、肥満者の場合のみということも分かった。 

 日本では内臓脂肪の蓄積を重視して腹部肥満を必須条件とし、高血圧や高血糖、脂質異常のいずれかを複数持っていることをメタボ判定の条件にしている。ただ、腹部肥満がないのに心疾患や脳血管疾患の発症率や死亡率が高いケースも報告されており、その要因が何なのかこれまで十分に解明されていなかった。

 武田教授は「肥満の有無にかかわらず、40歳未満の若年層を対象に男性の体重管理や適切な飲酒量に関する健康教育が必要」と話している。