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600℃の高温環境に耐える不揮発性メモリー素子を開発―フライトレコーダーなどの記録保持の確実性向上へ:千葉工業大学/産業技術総合研究所/物質・材料研究機構

(2016年10月11日発表)

 千葉工業大学と(国)産業技術総合研究所、(国)物質・材料研究機構の共同研究グループは10月11日、600℃の高温に耐える不揮発性メモリー素子を開発したと発表した。災害時の高温下でもデータの保持が期待できるため、航空機のフライトレコーダーや自動車のドライブレコーダーなどに導入すれば、これら装置の記録保持の確実性を高められるという。

 開発したのは金属原子のナノ構造を用いたナノギャップメモリーと呼ばれる素子。ナノギャップメモリーは電極間のナノメートル大の隙間にナノピラー(突起)を形成し、突起の接近、乖離(かいり)でトンネル電流の抵抗値が大きく変わるのをオン、オフ信号として取り出す仕組み。

 研究グループは今回、千葉工大が持つ電極金属の結晶性改善技術を用い、高温時のメモリー機能の維持に寄与するナノ構造の構造変化のメカニズムを解明、この知見をもとに、高温でも構造変化しにくい白金を電極素材に採用して、高温でのメモリー動作を実現した。

 600℃でオン、オフを100回切り替えた実験でメモリーの性能を確認した。白金ナノギャップメモリーは高温環境下でも室温と同じく安定に情報を維持し、書き込んだ状態を600℃で8時間以上保持したという。

 今後さらなる高温に対応できる材料の探索など基礎研究を進め、新メモリーの実用化を目指したいとしている。