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CO2を原料とするアルコール連続生産技術を開発―ヒドロホルミル化反応の原料COをCO2に置き換え実現:産業技術総合研究所ほか

(2021年8月25日発表)

 (国)産業技術総合研究所と北海道大学の共同研究グループは8月25日、二酸化炭素(CO2)を原料とするアルコール連続生産技術を開発したと発表した。CO2を活用・削減するカーボンリサイクルへの貢献が期待されるという。

 温暖化ガスのCO2削減に向けて、CO2を原料に新しい化学品を合成する技術が注目されている。研究グループは今回、その可能性を秘めた技術としてヒドロホルミル化反応(オキソ反応)に着目し、これまでは一酸化炭素(CO)を原料としてきたこの反応の原料をCO2に置き換えられる固体触媒を開発、CO2を原料とするアルコール連続生産を実現した。

 ヒドロホルミル化反応は石油化学産業における基幹プロセスの一つで、年間1,000万t以上のアルコールやアルデヒドがこの反応で製造されている。これまでこの反応では、プロピレンなどの不飽和炭化水素と、CO、水素を原料とし、コバルトやロジウムの金属錯体を触媒としてバッチ式の反応釜で製造していた。

 ただ、コバルトやロジウムの金属錯体を触媒とするこのバッチ式プロセスは、生産の連続性や、触媒と生成物の分離・再利用などに課題があり、その改良が求められていた。

 産総研と北大は今回、金属錯体にルテニウムを用いた新たな触媒を開発、原料のCOをCO2に代替させるとともに、フロー式反応器による連続合成に道を開いた。新触媒は、イオン液体を用いてルテニウム錯体触媒を多孔質シリカゲルの表面に薄膜状に塗布、固定化した。

 この触媒を高圧フロー式反応装置に装着し、プロピレン、CO2、水素を反応させたところ、主にブタノールが連続的に生成され、バッチ式に比べて反応効率が10倍向上したという。

 今後は新たな金属錯体触媒の探索やイオン液体の改良などを進め、主生成物の選択性と触媒の耐久性の向上を図り、カーボンリサイクル推進に貢献したいとしている。