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寝不足だとなぜ眠くなるのか?―遺伝子レベルで解明:筑波大学

(2021年2月25日発表)

 筑波大学は2月25日、寝不足だと眠くてたまらなくなる仕組みを遺伝子レベルで解明したと発表した。神経細胞内で働くたんぱく質「リン酸化酵素(SIK3)」を作る遺伝子を人為的に変異させると、睡眠の時間と深さがともに増加することをマウスの実験で突き止めた。新しい睡眠薬の開発や不眠治療に役立てられると期待している。 

 神経細胞内のリン酸化酵素を作る遺伝子の一部が置き換わった変異が存在すると、睡眠の時間と深さの両方が増加することはこれまでも分かっていた。こうした変異は「Sleepy変異」と呼ばれるが、従来の実験ではSleepy変異そのものによるのか、あるいは胎児期の脳の成長や末梢神経の機能に起きるさまざまな変異による影響なのか、はっきりしていなかった。

 そこで筑波大の柳沢正史教授らは、任意の時期に神経細胞にだけSleepy変異を起こさせることができるマウスを実験的に作り、その睡眠覚醒行動を詳しく解析した。その結果、マウスの生後に成長した神経細胞にSleepy変異を生じさせれば、マウスの睡眠覚醒行動に変化が起きることが分かった。また、胎児期からSleepy変異が起きているマウスでも、生後に神経細胞のみにSleepy変異を生じさせたマウスでも、無理に目覚めさせたときよりも寝不足後の回復睡眠の方が眠気の解消に時間がかかった。

 これらの結果から、柳沢教授らは「神経細胞内のリン酸化酵素(SIK3)が、睡眠の恒常性維持に直接的に関与していることが示された」としている。今後はさらに睡眠の恒常性維持を担う脳領域の解明を目指す。