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昨年の梅雨に熱帯インド洋が与えた影響を解明―記録的な大雨降らせた原因の1つ明らかに:気象研究所

(2021年2月19日発表)

 気象庁気象研究所は2月19日、昨年(令和2年)の梅雨に熱帯インド洋の水温変化が与えた影響をコンピューターシミュレーションにより解明したと発表した。昨年の梅雨は日本各地に記録的な大雨をもたらしたが、活発な梅雨になった原因の一つが熱帯インド洋の海面水温の上昇にあったことが分かったという。

 梅雨(つゆ)は6月から7月にかけて続く雨が多くなる季節のことで、梅の実が熟す頃に雨が降るようになることから名付けられたともいわれる。

 昨年は日本付近に梅雨前線が停滞し続け暖かく湿った空気が継続して流れ込んだことで「令和2年7月豪雨」と呼ばれる大雨が降り甚大な被害が発生した。

 その豪雨の成因については太平洋高気圧が平年より張り出したことや日本付近の偏西風の北上の遅れなどが挙げられているが、研究グループはインド洋で生じた「ダイポールモード現象」と呼ばれる現象の影響に注目した。

 この現象は、インド洋の熱帯域の東部と西部とで海水温に差が生じる海水の温度変動のこと。インド洋東部の海面水温が低く西部が高くなるのを正のダイポールモード現象、逆に東部が高く西部が低くなるのを負のダイポールモード現象と呼び、一昨年の令和元年の秋に強い正のダイポールモード現象が発生していた。

 梅雨の解析を行うには、梅雨の年々の変動を良く再現できるモデルが要る。

 研究では現在気象庁が季節予報を行なうのに用いている最新の季節予報モデルを使って昨年の梅雨へのダイポールモード現象の影響を詳細に解析した。

 その結果、ダイポールモード現象に続いて熱帯インド洋の海面水温が高くなっていることが判明、その水温上昇が日本の梅雨を活発にする要因の一つになっていたことが分かった。

 研究グループは今回の成果の利用で「東アジアの気候に対するインド洋の影響についての理解がより深まることが期待される」と見ており、季節予報技術の研究をさらに進めていくことにしている。