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オゾン層破壊物質フロン「CFC-11」の放出が中国東部で減少―地域スケールでの解析・公表で、中国の機敏な対策が効果:国立環境研究所

(2021年2月11日発表)

 (国)国立環境研究所などの国際研究チームは2月11日、中国東部から放出されていたオゾン層破壊物質「CFC-11」が2018年以降に減少し、増加前のレベルに戻ったと発表した。中国政府と産業界が機敏に反応し、排出を抑えたものとみている。モントリオール議定書の規制によって地球全体としても減少しており、オゾン層の回復が遅れるとの心配は回避されたようだ。

 「CFC-11」(トリクロロフルオロメタン)はフロンガスの一種で、かつては冷凍機の冷却剤や断熱材用の発泡剤、ドライクリーニングの溶剤などに使われてきた。これが大気中に放出され、成層圏で紫外線により分解されると、オゾン層を強力に破壊していた。

 モントリオール議定書の規制で生産が段階的に削減され、途上国も含めて2010年に全廃された。CFC-11の大気中濃度は1990年代半ば以降、順調に減少していたものの、2012年になると減少傾向が予想外に鈍化したことが継続的なモニタリングで判明した。

 国際チームは、かつて中国東部から排出されており、増加の約半分が中国北東部の山東省と河北省付近からのものと指摘してきた。

 今回のCFC-11減少のデータも、沖縄県の波照間ステーションと韓国のGosanステーション(済州島)の観測で見つかった。

 それによると、中国東部の放出量は2018年以降に減少し始め、2019年には高かった時期(2014-2017年)の年間放出量より約10kt(キロトン)低い約5ktに収まり、増加が始まった2013年以前のレベルに戻っていた。

 さらにCFC-11の製造原料となる「四塩化炭素」と副生成物の放出量を韓国の観測データに基づいて解析したところ、放出量は2013年ごろから増加し、2017年頃から減少に入るなどCFC-11の変化と一致していた。国際チームは全廃が義務付けられた後にも中国東部で製造され続け、その後に減少したとみている。

 この地域で生産されたCFC-11量は、2013年以前と比べて最大で112 kt増加したと推測されるが、仮にこれらが全て大気中に放出されても南極上空のオゾン層破壊への影響は小さい(0.2%以下)と推測している。

 中国東部で新規に製造されたCFC-11が、オゾン層の回復を大幅に遅らせるのでは、との心配は回避されたとみている。