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バイオマス原料で新機能性材料―多様な特性実現も:産業技術総合研究所ほか

(2020年10月12日発表)

 (国)産業技術総合研究所と(国)理化学研究所は10月12日、米ぬかやひまし油など性質の異なる2種類のバイオマス原料から新しい機能性高分子材料を開発したと発表した。柔らかく伸びるものから硬くしなやかなものまで、さまざまな特性を持つ材料が実現できる。バイオマスを用いた新しいゴム材料やフィルム材料、透明材料など多様な分野での応用が期待できるとしている。

 新材料は、木材成分のリグニンや米ぬかに含まれる化学物質「ヒドロキシ桂皮酸類(クマル酸、フェルラ酸、シナピン酸)」と、ひまし油から抽出した「リシノール酸」を原料にして合成した。重縮合と呼ばれる合成法を用いることで、2種類の分子が交互に規則的に配列した高分子が得られた。

 開発した高分子はいずれも固体で、熱を加えながらプレスする圧縮成形加工が可能。フィルム状に成形加工した後は無色透明で、繰り返し折り曲げることもできた。クマル酸やフェルラ酸、シナピン酸を部分構造に持つ高分子は、その組成によって引張強度や破断強度、熱分解温度が大きく異なることが分かった。そのため、高分子の組成を調節することで機械物性や熱物性が調節可能という。

 研究グループは「安価で豊富に存在するバイオマスベースの原料から製造した“バイオマスベース度100%のポリエステル”として、ゴム材料や包装材料などさまざまな分野への応用が期待される」としている。今後は生分解性などの評価を進め、企業とも連携して実用化に向けた研究に取り組む。