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米の飛躍的多収生産を試験圃場レベルで達成―「水稲再生二期作」で収量3倍に:農業・食品産業技術総合研究機構

(2020年9月8日発表)

 (国)農業・食品産業技術総合研究機構は9月8日、稲の栽培の仕方を工夫することと多収の品種により米の飛躍的な多収生産を試験圃場レベルで達成することができたと発表した。「水稲再生二期作」と呼ばれる栽培法により実現したもので、普通の稲作のおよそ3倍にもなる量の玄米を収獲することに成功した。今後この知見を基に再生二期作に最適な品種の選定などを進め現地実証試験を行なうことにしている。

 稲は刈り取ると残った切り株から再び新たな芽が出てくる。水稲再生二期作は1回目の稲を収穫した後の水田一面の切り株に出るその芽を育てて2回目の稲(再生稲)を収穫するという稲作法のこと。

 世界の人口は2050年に100億人に迫ると予想され、その半数の人が食べる米の画期的な多収技術の開発が喫緊の課題になっている。また、国内では加工用米や業務用米の多収化によるコストダウンが求められている。

 水稲再生二期作は、年1回の田植えで年2回収穫ができることから低コストで多収化が図れると期待され既に国内でも栽培事例があるが、収量性の検討がまだ十分に行なわれていない。

 そこで農研機構は、同機構九州沖縄農業研究センター(福岡県筑後市)の試験圃場で2017年と2018年に多収品種の「べこあおば」と「北陸193号」を交配して研究用に開発された多収品種を使って水稲再生二期作の試験栽培を行った。

 両年共4月中旬に田植えを行い8月中に1回目の刈り取りをし、切り株の高さを高く残して、(高さ50cm)その芽から再生稲、つまり2回目稲の籾(もみ)を育てるようにして11月上中旬に収穫した。

 その結果、1回目稲と2回目稲の合計の玄米収量が水田10a(アール、1aは100㎡)当たり1.47tと普通の水稲栽培の収量のおよそ3倍に達することが分かったという。

 農研機構では、さらに水稲再生二期作に最適な品種の選定、施肥技術の開発を加えた後実際の水田での実証試験を行い、加工用米の低コスト生産技術として九州地域を中心に普及させていく計画といっている。