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湿度によって色が変わる新物質を開発―湿度センサーの高機能化など期待:筑波大学ほか

(2020年8月19日発表)

 筑波大学、大阪大学、(公財)高輝度光科学研究センターなどの共同研究グループは8月19日、湿度によって色が可逆的に変わる新規物質を開発したと発表した。湿度の高い環境中では劣化するという、これまでの同種の物質の欠点を解消したのが特徴で、高機能な湿度センサーなどへの応用が期待されるという。

 大気中の蒸気成分を取り込んだり、蒸気と反応することで色が変化する特性をベイポクロミズムといい、身近な例として、乾燥状態で青色、吸湿状態で赤色を呈するシリカゲルなどが知られる。近年では共有結合性有機構造体や金属有機構造体などで機能性に優れたものが開発されている。

 ただ、これらの多孔質結晶は水分子の吸着により分子間のネットワークが切断されやすく、湿気の高い環境中では徐々に劣化するという欠点があった。

 今回開発したのは、分子性多孔質結晶と呼ばれる物質。分子構造に樹状のプロペラ部位を持っており、湿度の変化に伴ってこのプロペラ部位が回転する。それによって結晶中の細孔の性質が変わり、水分子を取り込んだり放出したりすることにより、色の変化がもたらされる。

 例えば、25℃の室温で湿度40%以下では結晶は黄色だが、50%に達すると完全に赤色に変化する。この発色変化は湿度変化に対して可逆的である。

 従来の多孔質結晶は水分子の吸着により配位結合や水素結合などの分子間のネットワークが切断されやすく、次第に劣化という欠点があったが、新物質はそうしたネットワーク構造を持たない材料設計に成功したという。

 開発された新結晶は、有機分子のみで構成されていることから色変化が起こる湿度条件の制御や多色化、高感度化といった機能を付与することができ、厳密な湿度管理や迅速な湿度検出の実現の可能性が期待されるとしている。