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超伝導体テラヘルツ光源の動作の仕組み解明―超伝導体が放出するテラヘルツ波の活用に向け前進:筑波大学

(2020年5月15日発表)

 筑波大学と京都大学などの共同研究グループは5月15日、テラヘルツ波の活用の基礎となる超伝導体テラヘルツ光源の基本的な動作原理を解明したと発表した。

 テラヘルツ波は周波数が約1兆ヘルツの電磁波で、水や金属の中は通らないが、布や紙、プラスチックなどは透過する。波長が300μm (マイクロメートル、1µmは1,000分の1mm )程度と短く、周波数が高いことから、超高速無線通信や精密化学分析、医療診断、古美術品の非破壊検査など各種の応用が期待されている。

 電気抵抗がゼロになる超伝導体は、他の物質には見られない特殊な性質を持ち、プラズマ波の伝播はその一つ。電磁波が超伝導体中を伝播する際、真空中を伝播する場合とは異なる形態で伝播する。この特殊な電磁波は超伝導プラズマ波と呼ばれている。

 これまでの研究で、超伝導体の結晶中に発生する特殊なこの超伝導プラズマ波はフォトン(光子)に変換されること、基板上に並べられた複数の超伝導光源は超伝導プラズマ波を介して結合し、高強度で位相のそろったフォトン(テラヘルツ波)を放射することが知られている。

 しかし、その仕組みは明らかでなかった。

 研究グループは今回、放射されたフォトンの偏波状態を調べてこの仕組みを解明、巨視的なスケールで位相同期が生じる際には偏波状態に特徴的な変化が現れることを発見した。このことは、超伝導体プラズマ波とフォトンが結合することにより、高強度で位相がそろったフォトン、すなわちテラヘルツ波が放出されることを示している。

 さらに、量子力学に基づいた数値解析によって、超伝導体中のプラズマ波とフォトンが結合する原理を明らかにすることにも成功した。

 これらの成果は、次世代の高速無線通信や分光技術に有用とされるテラヘルツ波を高い効率で発信できる量子通信デバイスの創成につながることが期待されるという。