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認知機能の改善は―有酸素運動より協調運動を:筑波大学

(2020年4月1日発表)

 筑波大学は4月1日、認知機能の改善には筋力トレーニングや有酸素運動よりも手足を協調させて動かす運動がより大きな効果を発揮すると発表した。過去30年間にわたって積み上げられてきた運動と認知機能に関する過去の研究データを統計的に分析して明らかにした。

 これまでのさまざまな研究から、習慣的な運動が認知機能の改善に一定の効果をあげることはよく知られている。ただ、運動の種類や運動量がどう関係しているのか、性別や年齢によって改善効果に違いがあるのか、などについては不明だった。

 そこで、筑波大の紙上敬太准教授はスイス バーゼル大学と共同研究を実施、過去30年間に健康な人を対象に実施された80件の研究データをメタ分析と呼ばれる特殊な統計手法で分析した。

 その結果、認知機能の改善には①運動の種類や年齢、性別に関わらず習慣的な運動は認知機能を改善させる、②有酸素運動や筋力トレーニングよりも、手足の協調運動やボールドリブルなど神経系の訓練を必要とするコーディネーショントレーニングの方が大きな効果がある、③1時間か1時間半の比較的長い運動を22週間以上続けると効果が大きいことなどが分かった。

 ただ、今回の分析に用いた過去の研究データでは、コーディネーショントレーニングに注目したものが11件と比較的少なく、運動強度についても報告がない研究が30%もあった。そのため今後、これらの点に注目した研究データの積み上げや、認知機能に関わるとされる肥満度や社会経済的地位など個人的特徴にも注目した分析を進めることが今後の課題だと、研究グループは言っている。