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次世代蓄電池実現に道―フッ化物イオン伝導を解明:京都大学/兵庫県立大学/高エネルギー加速器研究機構ほか

(2020年3月12日発表)

 京都大学、高エネルギー加速器研究機構(KEK)などの研究グループは3月12日、次世代革新型蓄電池の最有力候補の一つとされるフッ化物シャトル電池の実現に役立つ成果を得たと発表した。電池の中核技術となるフッ化物イオン導電性固体電解質の伝導メカニズムの解明に成功、電池の材料開発につながる道をひらいた。

 京大・複合原子力科学研究所の森一広教授らと兵庫県立大学、高エネ研、総合科学研究機構の研究グループが明らかにした。

 フッ化物シャトル電池は現在のリチウムイオン電池を蓄電容量などの点で大幅に上回る高性能次世代電池になると期待されている。今回、研究グループは、その中核材料となるフッ化物イオン導電性固体電解質として期待されるバリウム・ランタン・フッ素化合物(Ba0.6La0.4F2.4)のイオン伝導メカニズムを原子レベルで解明した。

 研究では、最新鋭の蓄電池研究用中性子回析装置を利用し、Ba0.6La0.4F2.4を構成する原子の位置や核密度分布を精密に決定した。その結果、電池の動作性能に大きな影響を与える固体電解質内でのフッ化物イオンの伝導経路を可視化、イオンがその伝導経路内を移動することを明らかにした。

 フッ化物シャトル電池の開発では、これまで固体電解質としてフッ化バリウムの利用が検討されてきた。ただ、このバリウムの一部をランタンに置き換えると、電池の性能に大きな影響を与えるイオン伝導率が劇的に向上することが知られていた。しかしその理由が不明なままだったため、電解質内のフッ化物イオンの分布や伝導メカニズムの詳しい解明が求められていた。

 研究グループは、今回の成果について「フッ化物イオン伝導体のイオンの流れに関する理解をより深められる」として、フッ化物シャトル電池材料開発に大きく貢献すると期待している。