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地球温暖化で北アルプスの降雪に変化―今世紀末を予測、多い年と少ない年とに2極化:気象研究所ほか

(2020年3月11日発表)

 気象庁気象研究所、東北大学などの共同研究グループは311日、地球温暖化に伴う中部山岳地域の降雪の変化を高解像度の気候シミュレーションで詳細に評価した結果、今世紀末の北アルプスの降雪は多い年と少ない年に極端化する可能性があるということが分かったと発表した。

 気象庁は、2017年に出した「地球温暖化予測情報第9巻」で地球温暖化が進行すると日本の広い範囲で降雪量が減少すると見通している。

 一方、他からは温暖化により標高が2,000mを越す中部山岳地域や北陸地方の内陸部では短期間に降る稀な大雪の降雪量が増えるという研究報告も出ている。

 今回の研究を行ったのは、気象研、東北大と(国)海洋研究開発機構、(一財)気象業務支援センター、長野県環境保全研究所のグループで、中部山岳地域の複雑な地形を再現できるような水平分解能が1kmという超高解像度の地域気候シミュレーションを実施して温暖化に伴う多雪年と少雪年の将来変化について分析した。

 産業革命以前と比べて世界の平均気温上昇を2℃未満に抑えることを目指すとパリ協定はうたっているが、今回の研究では「現在並み」、「2℃上昇時」(今世紀半ば)、「4℃上昇時」(今世紀末)の3つの気象状態を想定し、標高が2,000mを越す北アルプスの降雪を予測計算した。

 その結果、「4℃上昇時」の北アルプスでは、12月後半から2月前半にかけて現在を超えるような多くの雪が降る多雪年がある一方、降雪量が「現在並み」より少ない小雪年もあって降る年と降らない年の2極化がより明瞭になり、4℃もの温暖化があっても現在の2月の積雪深さに匹敵するほどの多雪があるという予測が出た。

 今世紀末にも到来しかねないと世界中が心配している気温「4℃上昇時」においても北アルプスが多雪になるという予測が出た理由を研究グループは「標高の低い地域では気温上昇に伴って降雪が降雨に変わるため降雪量が減少し、標高の高い地域では気温が上昇しても十分に寒冷であるため、降水量の増加がそのまま降雪量の増加に繫がるものと考えられる」からだと説明している。