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天の川銀河以外の銀河で「ホットコア」を発見―世界初の成果、生まれたばかりの星を包む雲: 東北大学/東京大学/国立天文台/筑波大学

(2016年9月5日発表)

東北大学、東京大学、国立天文台、筑波大学は9月5日、共同で天の川銀河以外の銀河に生まれたばかりの星を包む「ホットコア」と呼ばれる分子の雲を発見したと発表した。天の川銀河の外にある銀河系外ホットコアの検出は、世界でも初めてという。

 星が生まれる分子雲と呼ばれる領域の大部分は、極めて低温(マイナス260℃以下)で、炭素、窒素、酸素などを含む分子の多くが氷の状態で存在する。星が誕生してその氷状の物質が暖められ始めると星の周囲には、分子ガスが大量に存在する分子の雲ができる。

 ホットコアは、その生まれたばかりの星を繭のように包む暖かい分子ガスの雲のことで、星や惑星の材料物質を探る上で重要な研究対象となっている。

 しかし、ホットコアの観測は、望遠鏡の性能不足などから宇宙にある一千億以上にも達するとされている銀河の内我々が住む天の川銀河の中にある天体のみに限られていた。

 今回の成果は、その壁を破ったもので、南米チリのアタカマ砂漠にあるアルマ望遠鏡を使って天の川銀河の近くに位置する系外銀河の大マゼラン雲にある生まれたばかりの星「ST11」を観測し、世界で初めて天の川銀河以外にある銀河系外ホットコアを見つけた。

 大マゼラン雲は、地球から約16万光年の距離にあり、今回最も遠いホットコアを見つけたことになる。

 アルマ望遠鏡は、標高5,000mにあるパラボラアンテナ66台からなる巨大電波望遠鏡で、ミリ波、サブミリ波領域の分解能・感度が共に世界一といわれている。

 研究グループは、発見した初の銀河系外ホットコアを詳細に解析した結果、分子ガスの化学組成が天の川銀河内の天体のものと大きく異なることが判った、といっている。

 ホットコアには、一酸化炭素のような単純な分子から水や有機分子など生命にとって不可欠な分子まで多様な分子ガスが存在することが知られている。

その化学組成がこれまでのホットコアと大きく異なる理由について研究グループは「生まれたばかりの星を包む物質の化学的性質が、それらを取り巻く銀河の性質に強い影響を受けることを示している」ためだと見ている。

 この研究成果は、2016年8月9日発行の米国の天文学論文誌「アストロフィジカル・ジャーナル」827号に掲載された。