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金属並みの熱伝導示す“ゴム”―炭素繊維の複合材料で実現:産業技術総合研究所

(2019年2月17日発表)

 (国)産業技術総合研究所は2月17日、ゴムのように柔軟で金属並みの熱伝導性を持つ新材料を開発したと発表した。カーボンナノファイバーなど2種類の炭素繊維と特殊なゴムを複合化して実現した。折りたたみ可能なスマートフォンなどフレキシブル電子機器の放熱シートなどへの応用が期待できるという。

 産総研が東京大学の寺嶋和夫教授らと共同で、カーボンナノファイバーとカーボンナノチューブという2種類の炭素繊維(カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ)と、環動高分子と呼ばれる特殊な高分子材料「ポリロタキサン」を複合化することで実現した。

 炭素繊維は2,000 W/mK(W/mKは熱伝導率の単位)という高い熱伝導性を持っているが、自ら集まる凝集性が強く高分子材料の中に一様に分散させるのが難しかった。これに対し今回、産総研は水中プラズマ技術と呼ばれる手法を用いて炭素繊維表面の性質を変え、高分子材料中にうまく分散させることに成功した。さらにこの過程で交流電界をかけ、カーボンナノファイバーを一定の方向に配列することで、ゴムのように柔軟で、金属に匹敵する高い熱伝導性を示す複合材料が作成できたという。

 その結果、新材料の熱伝導率は炭素繊維の配列方向で14W/mKとなった。産総研はこれまでにポリロタキサンに窒化ホウ素粒子を加えることで熱伝導性に優れた複合材料を開発してきたが、その最高記録2 W/mKにととどまっていた。今回の成果はこの記録を大幅に更新した。

 産総研は今後、カーボンナノファイバーの配向条件などを最適化して熱伝導性と柔軟性の向上に取り組むとともに、企業との共同研究を進めて実用化を目指す。