[編集発行] (公財)つくば科学万博記念財団 [協力] 科学技術振興機構(JST)・文科省研究交流センター

つくばサイエンスニュース

トピックスつくばサイエンスニュース

イチジク野生種のゲノム解読―病気に強い品種開発加速:かずさDNA研究所/農業・食品産業技術総合研究機構ほか

(2020年2月7日発表)

 (公財)かずさDNA研究所、(国)農業・食品産業技術総合研究機構などの研究グループは2月7日、イチジクの生産に大きな被害をもたらす株枯(かぶがれ)病に強い抵抗力を持つ近縁野生種「イヌビワ」のゲノム(全遺伝情報)解読に成功したと発表した。抵抗力の基になる遺伝子の候補も突き止め、品種改良を効率化できるDNAマーカーも開発した。イチジクの新品種育成が加速すると期待している。

 研究グループには、国立遺伝学研究所と広島県立総合技術研究所、福岡県農林業総合試験場も参加した。

 イチジクの株枯病は土壌微生物が原因で起き、苗木の移植などによって感染が拡大して発病すると成木でも短期間で枯死してしまう。そのため株枯病に強いイヌビワの性質をイチジクに導入する新品種作りが進んでいるが、①交雑が難しい、②耐病性の判定に時間と労力がかかる、などの問題があった。そこで研究グループは、イヌビワのゲノムを解読して新品種開発を効率化する手法の開発に取り組んだ。

 ゲノムは生物が持つすべての遺伝情報を4種類の化学物質(塩基)が2つずつ対になった配列で記録しているものだが、解読したイヌビワのゲノムは3億3,160万塩基対あることが分かった。このうちたんぱく質のアミノ酸配列を決める遺伝子が5万1,806個含まれていることも分かった。さらにこの中から、株枯病に強い抵抗性をもつ候補遺伝子を突き止め、育成した新品種がその遺伝子を持っているかどうかを簡単に調べられるDNAマーカーも開発した。この結果、イヌビワの株枯病抵抗性をもち、イチジクに近い系統を幼い苗の段階で選別できるようになったという。

 研究グループは「ゲノム情報をもとにした育種が可能になり、株枯病抵抗性をもつイチジク新品種の育成が加速される」と話している。