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深海底に眠るメタンハイドレートの強さ、硬さ測定に成功―地上で分解起こすことなく計測、世界初の成果:産業技術総合研究所

(2019年11月28日発表)

 (国)産業技術総合研究所は11月28日、“次世代のエネルギー資源”と期待されている深海底に眠るメタンハイドレートの塊の強さ、硬さを測定することに成功したと発表した。メタンハイドレートは深海底の低温高圧下では安定しているが常温の大気圧下では分解してしまうため強さ(強度)や硬さ(剛性)を測定するのが難しく今回が世界でも初めてという。

 メタンハイドレートは、メタンと水の分子とが結びついた氷状の物質で、「燃える氷」ともいわれ、火を近付けるとその通りメタン分が燃え、永久凍土域や深海底の地盤内に豊富にあると期待されている。

 日本周辺の500mより深い海底も期待される領域と見られ、経済産業省が2001年度に発表した「我が国におけるメタンハイドレート開発計画」を機に研究が本格化、「表層型メタンハイドレート」と「砂層型(すなそうがた)メタンハイドレート」と呼ぶ2つのタイプがあることが分かっている。

 今回の測定は、2015年に日本海の上越沖の深さ約900mの地点から採取された表層型メタンハイドレートを含んだ円柱状のコアをサンプルにして行った。

 表層型というのは、深海底の表層部分にある塊状やノジュール状(粒状)をしたメタンハイドレートのこと。

 採取したコアの大きさは、直径50mm、長さ約70mm。それを水深約900mから分解が起きないようにした状態で船上に上げ、一度も減圧することなく専用の圧力容器に移して札幌市にある産総研の北海道センターまで運び、海底と同じ水圧10MPa(100気圧)、温度4℃の条件下で圧縮試験を行った。

 その結果、塊状メタンハイドレートは、強さ(強度)が平均値で3 MPa、硬さ(剛性)が同320MPaあって-10℃の環境下の氷に近い強さを持っていることが分かった。研究グループは「これは、天然メタンハイドレートの強度や剛性として世界で初めて計測された値となる」といっている。

 一方、ノジュール状メタンハイドレートを含んだ泥の方は、強さが同0.06 MPa〜0.2 MPa、硬さが同3MPa〜30 MPa、とそれよりずっと低かった。